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あしたのジョー 劇場版のkazu1961のレビュー・感想・評価

あしたのジョー 劇場版(1980年製作の映画)
4.2
▪️Title : 「あしたのジョー劇場版(1980)」
Original Title :※※※
▪️Release Date:1980/03/08
▪️Production Country: 日本
🏆Main Awards : ※※※
▪️Appreciation Record :2020-172 再鑑賞
▪️My Review
「劇場版エースねらえ」の前に、出﨑ワールドが全開なのが「あしたのジョー」のアニメシリーズです。この作品で出﨑流の作風が出来上がったと言っても過言ではありません。
本作「あしたのジョー劇場版」はそんなTVアニメシリーズ1の「あしたのジョー」の総集編ですが、その作風を鑑賞するだけで、よりあのジョーvs力石の一戦、伝説のラストシーンが鮮烈に蘇ります。
「あしたのジョー」の時代背景は高度成長時代、貧富の差が激しい時代でした。矢吹丈が、東京近郊のビルや道路を「つくる」労働者が集まるドヤ街に現れ、そこからボクシングを通じて世の常識をくつがえしていく物語構造も、そうした底辺と頂点のギャップを投影したものなんですね。
そんな矢吹丈の「野性味」を見事に引き出したのがアニメ監督だった出﨑統でした。

極太でかすれた描線がパンチのスピード感を代弁し、クロスカウンターの衝撃は顔面を歪ませ、勝負の一瞬は永遠の時として静止画で定着される。。エアブラシを用いた異色の背景が異常心理を押し出し、丈の眼光やリングの照明や夕陽はギラギラと輝く。そう映像全体が、たたきつけてくるようなある種の圧力を放っているのです。
その奔放な映像テイストは、矢吹丈の常識をくつがえす生き様や、自分よりも強い者に向かって容赦なく牙をむき、放たれるパンチとも強くシンクロしているんですね。(参考:書籍 完全解析 出﨑統)

本作は、原作に追いついて一旦終了させたTVアニメ1st版を、劇場用に再構成して、力石編をラストにもってきました。劇場版としてうまく再編集され、2時間30分はアッという間に出崎流の映像テイストに酔って過ぎていきます。
やはり、ラストの力石戦はその野性味が張り裂けんばかりに。。そして、最期には優しさと苦悩が。アニメ史上の名シーンですね。何度観ても感動します。さらに本作では、音楽の相乗効果が素晴らしく、OP「美しき狼たち」、ED「K.O(ノックアウト)」が印象に焼き付いています。
あと、力石や葉子など一部のキャストを劇場用な変更しているんですね。声の出演は、あおい輝彦(矢吹丈)、藤岡重慶(丹下段平)、岸部シロー(マンモス西)、細川俊之(力石徹)、檀ふみ(白木葉子)となっています。
出﨑ワールドを観るという意味では総集編ではありますが高得点な作品です!!

▪️Overview
不良少年矢吹丈がドヤ街で知り合ったアル中の元プロボクサー丹下段平の教えでボクシングの道に進み、宿命のライバルとの戦いを描く。1968年1月から1973年6月まで『少年マガジン』に連載されて日本中にブームを起こした高森朝雄(梶原一騎)とちばてつやの原作による同名の人気漫画の映画化で、脚本、監督は福田陽一郎チーフ・ディレクター出﨑統が担当。
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