海

クローズ・アップの海のレビュー・感想・評価

クローズ・アップ(1990年製作の映画)
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嘘なんか平気でつけるくらいがいいわ、どうせ続いていく道なら自分で歩けたほうがいい、自分のために泣くくらいだったら誰かのために笑ったほうがずっといい。嘘、いつわり、演技、それなくしてわたしはわたしを表現することはできない。本当のわたしを見てほしい、いつまでも見破らないでいてほしい、その二つは絶対に抱き合ってわたしの中に存在している。嫌いだと言いながら好きになり続けることは、好きだと言いながら好きになり続けることよりずっと簡単だもの、わたしのままでよりも、わたしじゃない誰かになってわたしを抱きしめるほうがずっと簡単だ。良いと思える映画は時と経験を重ねるうちに変わっていくものだけど、誰もそれを嘘と呼んだりはしない。カメラから外された誰かが居れば、その画は嘘になるのだろうか、映されなかった真実があれば、映されたものは偽りになるのだろうか。拾い集めた花の束のようだった男が、鉢植えから伸びた一輪の花になる。それは悲しいことかな、言葉に花を添えるか花に言葉を添えるか、今日はどっちかな。風化されて消えてしまうのはいやだ、届きはしなくてもあなたがいい。やめないで演じるのを。咲いてわがままに。
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