よしまる

突然炎のごとくのよしまるのレビュー・感想・評価

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
3.8
 昨年ピエールカルダンを観に行ってから久しぶりにジャンヌモローを観たいと思っていた。

 ジュールとジムという2人の男の子が、ジャンヌモロー演じるカトリーヌという1人の女の子に同時に恋をするボーイミーツガール。
 いまじっくりと観てみると、これは三角関係のようで、まったく正三角形でもなければ二等辺三角形ですらない、とても歪な三角だったw

 74歳のじいさんが原作書いてるのもおかしいし、30代でこれを映画化したいと思ったトリュフォーも相当ヘン。女から見たらこんなダメンズどっちも要らんわ!てなりそうなものだけれど、こんな奔放な女性には憧れてしまうだろうし、それでも未練タラタラ追いかけてきてくれるカワイイ男の子たちにはキュンキュンくるのかもしれない。

 そんな女性的な部分を取り沙汰されやすい映画ではあるけれど。

 トリュフォー自身は計算高くそれをやったわけではなくて、純粋にこんな女性像に惹かれ、ダメダメな男たちをペーソスたっぷりに描きたかったのではないか。もっと言うと、1人の女の子を通して描かれる2人の男の子の友情物語。
 同じ女の子に惚れても壊れない男同士の友情。カトリーヌは自由なのではなくて、常にこの友情に嫉妬していただけだったんじゃ?と言うのは若い時に観た時には浮かばなかった感想だ。
 そりゃこれを観て女性の自立だとか言ってしまうのはそれこそ川に飛び込んで抗議のひとつも示したくなるほどに女性をわかっていないんじゃあないかと思う。

 原作には無いらしい、映画オリジナルのラスト。若い頃に観たフランス映画はどれもこんな感じで唐突に幕を閉じる。当時の観客たちも、もはや一つの様式美のように、みんなヌーベルヴァーグを楽しんだのかもしれない。
 どこにでもありそうな話を、どこにもなさそうな結末へと着地させることでテーマを浮き彫りにし、強烈な印象を残す。
 やはりこの映画は青春映画の傑作の一つであり、決して恋愛映画ではないと確信した。