Kamiyo

祭りの準備のKamiyoのレビュー・感想・評価

祭りの準備(1975年製作の映画)
3.6
1975年 ”祭りの準備” 監督 黒木和雄  脚本.原作中島丈博

脚本の中嶋丈博さんの自伝的作品。
売春防止法ができた直後らしいことがストーリーから分かるので
1958-59(昭和33-34)年であろう。
酒と犯罪と左翼運動とセックスにあふれた高知県の田舎でシナリオライターを目指す若者が、様々な出来事にぶつかり最終的に東京を目指して旅立つというストーリー。
その猥雑なエネルギーに圧倒される。

主人公沖楯男(江藤潤)の周囲の様々な人間が一人一人きちんと描かれていることが素晴らしい。

楯男の夢を理解せずに母親の過剰な愛情に嫌気が差す
楯男(江藤潤)を縛ろうとする母親沖ときよ(馬渕晴子 )
女癖が悪いが意外と常識もあり憎めない父親沖清馬(ハナ肇がいい!)
父親をめぐる女2人 島村ノシ子(真山知子)徳原市枝( 絵沢萠子)
二人は清馬巡り職場に於いて 喧嘩をする女の争いがある

金は盗んで得るものという考えの楯男の家の隣家の
友人中島利広(原田芳雄)が、刑務所行き兄中島貞一(石山雄大)
兄貞一がいない時は弟利広(原田芳雄)と関係するその妻美代子(杉本美樹日活ロマンポルノのスター)杉本美樹・・・良かったですな。。

やくざにつかまりヒロポン漬けで売春させられ頭がおかしくなって帰ってきたその妹中島タマミ(桂木梨江 )
タマミに入れあげる楯男の祖父茂義(浜村純)が現れタマミを寝取られてしまう。数カ月後、タマミが妊娠した。
父親として名乗り出たのは孫ほど年の離れた茂義だったが
タマミは子供を産むと同時に正気に返った。
だがその時からタマミは茂義を激しく嫌悪し
ついに老人祖父茂義は首を吊った。
浜村純さん・・・・怖いって・・・・
この方が村中の狂気を巻き起こしてる中心って感じ

楯男はそうしたドロドロした男女の人間関係をシナリオに書こうとするが歌声運動に参加する楯男の恋人上岡涼子(竹下景子)はそれを不純だと軽蔑し、志の高い物語を書くようにいう。
その涼子も左翼運動にかぶれていて、オルグの男と寝てしまう。
楯男の真面目だけど「我慢出来ん!」心を寄せてる涼子へ
竹下景子も、ついに興奮してセックスをしてしまった。
いや~色っぽい、ラストにチラッと映る景子の****。衝撃でした。

女性が話す土佐弁は飾りっ気が無く朴訥な反面、本心がさらけ出されているような気がして自分には好ましく聞こえた。
本作に登場した女性たちは皆たくましく勝気であった。

ようやく家出して東京行きを決意した主人公は駅で偶然殺人容疑で逃亡中の利広(原田芳雄)と出会う。
金をいきなり無心されるが、その金が東京行きの資金と知った
利広(原田芳雄)が頑として受け取ろうとしない場面は男のプライドを感じさせた。
どんなに自分が惨めな境遇であろうと志を抱く友から金をもらう事などできない・・万歳しながら列車を見送る利広(原田芳雄)の姿を車窓からのカメラがワンカットの長回しで捉える。
旅立つ者がいる一方でどこにも行く場所のない者がいる。
何と残酷なコントラストだろう。
本作と言えば「原田芳雄」一世一代の名演技ですよ!!
駅でのあの「ばんざ~~い」シーンですよね・・アレは、泣けました。
何と言うせつない「旅立ち」でしょうか・・・・で、
やっぱり凶暴な男・原田芳雄さんですね。

この映画の時代設定昭和33-34年は「ALWAYS三丁目の夕日」と同じだ。そう考えるとおかしくてたまらない。
東京にはあんな世界があり、地方にはこんな世界がある。
「ALWAYS」がいかにも偽善的に感じられる。
それが高く評価されるのだから(こちらはキネ旬1位!)
日本人のアイデンティティーが変わったのだと思わざるを得ない。
今の若い人にしてみると、ちょっと勘弁してよ、と思うだろうけど。

現代のようにとりすました顔をして生きるのではなく、生きるためにとにかく必死だった時代の生と性への渇望があふれている。

ATG映画ですから、クラ~~~イのは、当たり前。
田舎青年の「地獄の青春日記」なんだけど
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