Kaoru

エヴァの匂いのKaoruのレビュー・感想・評価

エヴァの匂い(1962年製作の映画)
4.3
悪女って悪いオンナなのではなく、アクの強いオンナのとこを言うのね、といった感じの映画。そして、性的関係ってのがいかに空虚で寂しいものかを描いています。

観たのはもう1週間くらい前なのに、いまだ毎日、この映画について考えてしまぅ。それだけアタシは心をかき乱されてしまった。

ジャンヌ・モローはいっつもかわいそうなほど鼻に付く役が多いんだけれど、この作品はその極み。

余談だけれど、アタシがずっと前から思ってたこと。何故にどうして日本ではアホなオンナがモテるんだろう…。この作品で答えが出たわ。そういう観念を産んでるのは、オンナの仕業だったんだと。

ジャンヌ・モロー演じるエヴァはとても頭のいい高級娼婦。普通のオトコが毛頭駆け引きなどできるお相手ではないの。なのにも関わらず、タイヴィアンという1人のオトコをベタベタに惚れさせてしまう。このエヴァってオンナがどのくらい頭がいいかと言うと、自分を作家だと偽るタイヴィアンを、部屋に入るだけで全てを見通してしまう。そしてタイヴィアンの期待しているような言葉など決して吐かないし、むしろ平気で侮辱すらする。すんごい知性的なやりとりが垣間見れたりもして、で、傍若無人を発揮すればするほどオトコはなんとか追いつきたいと頑張っちゃう。ホントすごいオンナ。

そっくりそのままではないにしても、こういう要素をアタシたち日本人女性が身につけたらば、きっと世の男性ももっと知性的な女性に惹かれるようになるかもしれない。

誰がどう見たって、タイヴィアンはフランチェスカとのほうが安泰な人生を送れるだろうし、エヴァへの愛情はこの先も不幸な結末しか残さないとしか思えないんだけれど、それがどうした!?分かってても溺れるのが恋なのよね。

結局のところ、タイヴィアンってオトコはフランチェスカとも、エヴァとも、丈の合わないオトコだったのではないかとアタシは思ったわ。だって、フランチェスカは女優、エヴァは高級娼婦。でも一方でタイヴィアンはエセ作家だって言うし、炭鉱で働いたってのもたった10ヶ月って言うじゃない。じゃぁ、一体あなたはなんなの?としか思えない。
もしエヴァの言うとおり、ホントに旦那(カジノにいた男)がいるって言うのなら、それは嫁が高級娼婦をやっていてもビクとも動じない、恐ろしく度量のあるオトコなんだと思うし、きっと彼女をいなすことができるのはそういう人しかいないと思う。
ホントのコトを言っていてもあやふやにしか見えないオトコと、ホントのコトを言ってるかどうかも分からないけれど自分を持っている、というか自分しかないオンナの対比がとても興味深かったわ。

みなさんがおっしゃっている通り、鏡や水面の使い方、またビリー・ホリデイのWillow Weep For Meがこの映画の全てを包んでいて素敵です。
そうかヴェネツィアは水の都と言うとけれど、それは鏡の都でもあるってことなのね。自分がどうあれ、正直に自分の姿を映してしまう。原作ではハリウッドのお話だと言うけれど、これは水の都ヴェネツィアではなかったらここまで深い話にはなり得なかったような気もしてしまう。

それから冒頭のヴェネツィア映画祭のシーンで遠目にヴィットリオデシーカが見えたので調べてみたら、61年のヴェネツィア映画祭を撮るためにわざわざロケ班を出して撮影されたのだとか。

メロドラマになり兼ねないほど、シンプル。それなのに、なんだかとても深い作品。
Kaoru

Kaoru