Kaoru

ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実のKaoruのレビュー・感想・評価

3.5
セバスチャン・スタンってとても正統なイケメンだと思う。ルーマニア生まれだって言うから、バルカンの血が入るだけでコクが出ると言いますか、わずかな分量のあの暗さが好き。

ウィンターソルジャー感が強くなるかなぁと思ったけれど、ちゃんとペンタゴンの官僚は務まっていたし、大物ベテラン俳優陣ともちゃんと対等にやれていたと思う。特にあの涙する演技は彼の抑えられなくなった感情が自分の中に入ってしまって、もうたまらなかった。

それはそうと、
ウィリアム・H・ピッツェンバーガーさんなんていうベトナム戦争の英雄がいたのも驚いたけれど、30年勲章受賞を却下されていたということも驚き。オフィスワーカーが本当の意味で戦場の出来事を想像することなんて絶対に絶対にできないんだなぁと思った。

アタシ自身2年前に心臓の大病にり患して、死んでてもおかしくなかったと聞かされて感じたことなのだけれども、病気などで死ぬ思いをしたり、例えば戦争でとてつもない体験したりとかも、どれだけその事実を他人が見聞きしても、その全てを受け止めることなんて絶対にできないなぁと思う。それでも当事者は大切なことだから、次の世代へと伝えないといけないのかもしれないけれど、言葉にできないほど辛かったとしたら、やっぱり彼らのようになんとなく口を閉ざし姿を隠してしまいたくなるものなのかもしれない。

友達から「入院や手術や大変だったでしょう?」と聞かれたところで「大丈夫!」としか言えない自分がいる。こんなところが大変だったよ、こんなことを感じたよ、本当はそう言えることもたくさんあるけれど、友達との間に必要なのは今のアタシが元気であること。それ以外の過去の大変さは聞かせたくもないし、どうでもいいやって思った結果、「大丈夫!」って言葉に要約されてしまう。

大丈夫って、便利な言葉だけれど、いろんなことをぼやかしてしまう言葉だなぁと、そんなことを考えながら観ていた。
何はともあれ、これからのセバスチャン・スタンが楽しみ。

あと、この作品は、ピーター・フォンダとクリストファー・プラマーという偉大な俳優2人の遺作でもあり、とても貴重な作品でもあるのね。ハリウッドも質のいい戦争映画を作ることができるんだと安心したわ。
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