あなぐらむ

とむらい師たちのあなぐらむのレビュー・感想・評価

とむらい師たち(1968年製作の映画)
4.7
野坂昭如原作、藤本義一脚本で送る超絶ドライで強烈なもう一つの「おくりびと」。
人の死を玩び稼ぐ葬儀ビジネスの、何かに憑かれたかの様な狂騒の果てに勝新が見たのは、まさに現実となったこの世の地獄。伊藤雄之助、藤村有弘らひと癖もふた癖もあるキャスト陣がアンサンブルするまさに重喜劇。
死人のデスマスクを作る職人に「ガンメン(顔面)」とつける人を喰ったセンスの野坂原作に、犬シリーズ同様藤本義一の筆が冴え、最初は軽妙だった物語が徐々に本当の顔、即ち人命を弄ぶ最大の罪を最期に現出させ、観客の度肝を抜く。恐ろしい映画。

本作を観て感じたのは、映画の飛躍力、比喩力の凄まじさだ。三隅ならではの死生観、冷徹な眼差しは現代劇でこそ活きているのかもしれない。
宮川一夫の縦横無尽なキャメラワーク、前衛芸術もかくやな大映美術の凄まじさ。足りないのはちゃんとしたヒロインだけだ。