ドント

江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間のドントのレビュー・感想・評価

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1969年。記憶を失い精神病院に入れられていた青年が、わずかな記憶と細い糸を頼りに辿りついたのは、奇怪なる異形の楽園の孤島だった! 乱歩の『パノラマ島綺譚』『孤島の鬼』あたりを基礎に、短編と怪奇趣味=乱歩エッセンスを注入した逸品。
モノスゴイ題名であるが実はエロもグロもいかがわしさも悪趣味もさほどではなく(※個人の感想です)、謎と不条理なる物語展開を見せるが最後には何ときちんとそれなりの条理が説明されてしまう。時代性を抜きにすればかなりおとなしい作品と感じるのだが、ここに暗黒舞踏集団と美術が投入されたことでグイッと一段違った迫力が生まれることとなった。
後半の主人公とも言える暗黒舞踏の首魁・土方巽の放つオーラが素晴らしく、彼に率いられる人間たちや島の情景も異形ながらもどこか気品があって、映像もかなり気を張っている様子が伺われて、変な言い方だが芸術然としている。それゆえ割とこぢんまりと探偵映画としてまとまっちゃうのがもったいない……と思っているといきなり岡上淑子作品のような映像が花開くラスト。これにはさすがに呆然。なるほどこれはカルト映画というやつだ。
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