てっちゃん

別離のてっちゃんのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.3
いやあ、ここまで鑑賞して心労したの久しぶりだわ。
これは一気見してしまうから、次の日がオフなときに観た方が良い作品。

イラン映画、たぶん本作がお初でしょう。
それがこの完成度か、、イラン映画存じておらずで「すみませんでした!」と鑑賞後には謝罪をしてしまったほど。

物語はものすごくシンプル。
イラン国内の情勢が良くないので安定した生活を求めて外国へ移住したい妻と、介護が必要な父親を国に残しておけない夫と、その夫妻の娘。
夫妻のすれ違いから、妻は別居することになり、父親を介護する人が必要になり介護人を雇うが、、みたいなお話。

そこにイラン国内(日本でも全然当てはまる話)で起こっている格差社会問題、介護問題、養育問題やらが絡んでくるまでは、よくあるかもだけど、イランならではの宗教的価値観と裁判制度が絡んでくる。

よくあると書いてしまったけど、介護問題なんかは宗教的価値観が絡んでくる(介護は家庭の役割という風習があり、イスラムの教えより女性が男性の身体を触ること=介護することへのハードルが高い)から、抱えている問題は同じであれ、根付いている精神的な考え方が違うとでもいえるのかな。

私の勉強不足もあり、この宗教的価値観が私にはここまで人によって差がある(イランの人達がみんな熱心な信者ではないに決まっているよな)とは知らなかったし、宗教が生活に馴染んでおり、人生の決め方すらも宗教に委ねるとは知らなかったので、ここにかなりの衝撃を受けた。

"コーランに誓って"という言葉も、人それぞれに重みが違うわけで、その責任も異なる。
人それぞれに信仰心が異なるものって、どうなのよと思ったりもするけど、それは刷り込まれてきたものが桁違いに違うし、それはそういう文化なのだから、その中で語るべきだとも思う。

家庭裁判所シーンはものすごく印象的で、弁護人がいなくて、あんなにも当事者2人が意見言い合うんだ。
これって口が上手い方が絶対に有利じゃないの?っても思ったりした。

そこに娘が絡んでくるラストへの流れ。
外で待つ夫婦。
このシーンでもだけど、本作では様々な「別離」を描いている。

みんないろんなものに必死で、必死にしがみついていて、周りのことになんて気が配れないくらいに必死で生きている。
そんな大人を子供たちは見ていて、それが当たり前になっていくんだろうし、そうすることが正解だと思うんだろう。

役者さんたちの演技のレベルも非常に高くて恐れ入りました状態。
気にはなっていたけど、本当に観て良かったと思えた傑作でございました。
てっちゃん

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