ひろ

別離のひろのレビュー・感想・評価

別離(2011年製作の映画)
4.0
アスガル・ファルハーディー製作、監督、脚本によって製作された2011年のイラン映画

第61回ベルリン国際映画祭で、金熊賞、女優賞、男優賞など5部門を受賞し、第84回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した。

ベルリン国際映画祭の金熊賞とアカデミー賞外国語映画賞を同時に受賞するなんて快挙だ。イラン映画と言われてもあまり馴染みがない。国際的には好戦的なイランという国のイメージはあまりよくない。しかし、そんなのは偏ったメディアの情報に操作されているにすぎない。国に干渉されやすい環境で自ら製作費を集め、イランという国の真実を映し出した、アスガル・ファルハーディーは偉大だ。

二つの夫婦の衝突を軸にしながら、夫婦問題、格差社会、信仰、介護問題など、イラン社会の問題を浮き彫りにしていく。この映画が映画賞を総なめにした効果は計り知れない。イランという国は、北朝鮮のように表面上しか情報が伝わってこない。この映画では、そんなイランの実情を垣間見ることができる。宗教や国柄の違いはあれど、同じ人間なんだという身近さを感じるには充分な内容だ。

ベルリン国際映画祭で、出演者が揃って男優賞と女優賞を受賞したというからすごい。世界的には知られていない俳優たちの、真に迫った演技は圧巻だ。誰に肩入れしたらいいか分からなくなり、複雑な展開から目が離せないのは間違いない。待ち受ける結末の余韻は後を引くほどだ。映画というのは面白いだけでは社会的な価値を見出せない。そこに、学ぶべき情報が含まれて、初めて映画というものが評価されるのかもしれない。
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