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戦艦ポチョムキンのyutaのレビュー・感想・評価

戦艦ポチョムキン(1925年製作の映画)
3.5
やっぱサイレント映画って紙芝居的に感じる。音楽が流れてセリフは字幕。 自ずと情報量的にこちらも考えなければならないインタラクティブな感じ。遡及的に実験映画的だったのやもしれん。
ロシア革命の話と思いきや、、戦艦ポチョムキンの革命。ただ構図的にロシア革命の比喩。まぁプロパガンダ映画だから内容はたいして重視するべきでない。にしても革命の指導者的人が殺されて横たわってる絵が亡くなったスターリンに似てて予見してる感じ。
革命の本質も何となく見えてくる。デトロイト暴動でもフランス革命でもコップいっぱいの水が些細なことであふれたみたく雪崩的に始まる感じとか。
この時代の映画はサイレントなのでナラティブな面が否が応でも際立つ。どちらかというとストーリー性より映像面、つまりカット割りや編集という脚本家より映画監督の力量が多分に重視される。そんな時代にソ連は特に先進的な映画技術を持っており映画シーンに重要な足跡を残す。多大な影響も。(DWグリフィスからストーリー性、演劇性の側面が強くなる。それは多分にメロドラマ要素が強い)ソ連の代表的映画監督のエイゼンシュテイン。そして彼の代表作、戦艦ポチョムキンというプロパガンダ映画。内容はいたって単純な革命物語だが、映像面の緊張感は今見ても眼を見張るものがある。
後半の虐殺シーンは映像面は凄惨で音がなくても人々の逃げ惑い泣き叫ぶ声が聞こえる。
また、前半の銃殺のシーンとかぶらすように後半にも専制国家軍が銃を構えるシーンを描き、その後の差異を出すことで善悪的な立場を印象付けているのもプロパガンダ的にうまい。(つまり伏線)当時の人は、あの映像を見ると確かに腹に据えかねる思いが湧き上がって来たろう。もちろん、エイゼンシュテインの音楽の使い方(特に止めるシーンの緊迫感)や知的モンタージュなどを駆使したインパクトある絵作りも巧みで今の映画にも技術面でなくアイデアでは劣らないだろう。有名なカットはやはりインパクト大でフランシスベーコンが参照するのもわかる惨憺たるシーンだ。
あと、も一個魅力的なのが殺戮シーンなどのダイナミックな動きのあるシーンが20年代の時点で3つもあること。これは現代ハリウッド映画の基本的なアクション数。今も昔も変わらないのか。エイゼンシュテインらの影響が色濃いのか。(ハリウッドなら一発目にアクションドン!で観客を惹きつけるのが多い。ミッションインポッシブルローグネイションとかは予告編の作りもあって驚かされた)何にせよ、1時間ちょいの映画に3つのアクションは無声映画というのも鑑みればバランスよく飽きさせない構成で楽しめた。3つ目のアクションシーンは戦艦の戦闘準備のシーン。ラスト仲間だったとわかるシーンはほっとするより肩透かしではあった。戦闘準備のシーンはシュワちゃんが銃火器をガチャガチャ音立てながら準備してる感じがして良かったのに。
あと、プロパガンダなら映画内でハッピーエンドとして完結させず市民虐殺までにしといて当時の鑑賞者にそのまま鬱憤を植え付けて実際社会に影響を与えたりしたら奥行きがあったろう。そんなことしたらとんでもないけど。。。でも当時のこの映画のどんなもんだったのか。気になる。社会主義リアリズムの台頭において敢えてモンタージュとか使ったり、実話ながらも史実と違う改変したり随分挑戦的ではあるけど。(だからこそ後々の映画人に影響与えてるし、オデッサの階段という名シークエンスが産まれてる。その時点でエイゼンシュテインは英断したことに事後的にわかる)
ポチョムキン!って言いたなるわ。ポチョムキン!って。
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