ミッキン

自転車泥棒のミッキンのレビュー・感想・評価

自転車泥棒(1948年製作の映画)
5.0
30年前に観た時、ラストシーンに衝撃を受けた。あれ以来、自分の中の名作ベストテンに常に入り続けている。
細部はところどころ忘れていても結末は覚えているから今日まで振り返る勇気が無かった。帰納法で気分が萎えることは分かっているからだ。

昨日、映画好きの母親から観ようと誘われたが遠慮した。1人で見返したくなったからだ。そして今日、封印を解いた。

他のデシーカ作品を知った今でもこの演出は別格。占い師もサッカーの試合も全部伏線回収されてるし、平常を保てなくなるアントニオの行動心理が嫌という程出ている。
盲目になるあまり息子の存在を見失い、泣け無しの金で食事を振る舞い、理性崩壊で自転車を盗む決心をした時に犯行を見られたくない一心で別行動を企てる。
疑心暗鬼で人を疑い、自分が犯行に及んだ際には泣き叫ぶブルーノに免じて情状酌量してもらう。教会で喚き、神を侮辱してると追い出されながらも結果として神に救われたのかもしれない。
ある意味占いは当たっていたのかも。
最後にグッと手を握りしめる親子の切なさに今回も涙が出てしまった。

演者も音楽も、この映画を作り出す全ての要素が素晴らしい。30年経ってもあの時感じた衝動は同じだった。
数少ない5点満点。揺るがないMY名作。