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火垂るの墓のkazu1961のレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
4.4
▪️Title : 「火垂るの墓(1988)」
Original Title :※※※
▪️Release Date:1988/04/16
▪️Production Country:日本
🏆Main Awards :※※※
🕰Running Time:88分
▪️Appreciation Record :2020-228 再鑑賞
▪️My Review
悲しくて、辛くて、そして悲しくて。。。トラウマになってしまいそうな作品なんですが、その奥深さに何度となく鑑賞してしまいます。
本作、「火垂るの墓」は兵庫県神戸市と西宮市近郊を舞台に、戦火の下で親を亡くした14歳の兄と4歳の妹が終戦前後の混乱の中を必死で生き抜こうとする姿を描いています。トラウマになる人もいるほど、戦時の時代背景や人間関係をリアルに描写したアニメーションとして海外にも評価が高い作品です。
原作は、1967年に発表された野坂昭如による小説で、原作者である野坂昭如が自らの戦争体験をもとに書いており、1968年に直木賞を受賞しています。アニメの「火垂るの墓」の監督を勤めたのは、スタジオジブリの共同創設者である高畑勲です。高畑監督は、2018年4月5日に亡くなられたことから、「火垂るの墓」も再度脚光を浴びているんですね。
本作、高畑監督ならではの、作画や街の描写、戦闘機や爆撃の描写全てがリアリティを追求されたものになっています。
私がとりわけ、この作品が頭から離れないのは、私の出自地でもある神戸が舞台になっていること。1945年の終戦前後の混乱の時代、兵庫県神戸市・西宮市を舞台として描かれたことにあります。神戸三宮駅、御影本町6丁目・8丁目、石屋川駅、御影公会堂、御影小学校、回生病院・御前浜、満地谷など、その作画を見て今の場所を明確に思い出すことができるリアリティがあるからです。
さらに深いのが、本作は反戦映画と思われがちですが実は反戦映画ではないということ。高畑監督が「反戦アニメなどでは全くない、そのようなメッセージは一切含まれていない」と繰り返し述べています。テーマは“生きる”ということ。第二次世界大戦終戦前後の厳しい時代を必死に兄妹で生き抜こうとする命の物語です。高畑監督はさらにこう言っています。「清太と節子が社会から孤立しながらも家庭生活を築き上げる事には成功しますが、周囲の人々との共生を拒絶し社会生活に失敗するのは現代を生きる人々に通じる物がある。特に高校生から20代の若い世代に共感してもらいたい」と。

そして、冒頭で現代の三宮駅から過去の三宮駅に切り替わるところやラストで現代の神戸の街のシルエットに繋がる構成などはアニメオリジナルです。幽霊となった清太が自分が死ぬまでの数ヶ月間を現代まで繰り返し見ている事が緻密に計算されて描かれているんですね。作中で画面が赤くなる時は、清太と節子の幽霊が登場し近くで見ており、記憶を何度も繰り返し見つめていることを意味し、阿修羅のように赤く演出されているんですね。(参考:Wikipedia)

海外でも、暴力描写がない戦争映画としても評価が高いそうです。いずれも共通するのは号泣し戦争の悲惨さを痛感するといった声のようですね。
もう一つ大きなリアリティの仕掛けは、声優陣。特に節子を演じた白石綾乃さんは、当時まだ5歳11ヶ月でした。高畑監督が節子には同年代の関西出身の子を起用することを強く要望し起用されました。高畑監督は声優キャストは節子と同年代のほうが、視聴者が感情移入しやすいだろうと考えていました。節子の声がなければここまでの名作にはなっていないでしょうね。
愛情と無情が交錯する中、蛍のように儚く消えた2つの命の悲しみと鎮魂を、リアリティを持った演出で見事に語り上げた名作アニメです。
キャッチコピー「4歳と14歳で、生きようと思った」、これに全てのメッセージがこめられていますね。

▪️Overview
終戦間近の神戸で親を失くした幼い兄弟が必死で生き抜こうとする姿を描く。野坂昭如原作の同名小説のアニメ化で、脚本・監督は高畑勲、作画監督は近藤喜文がそれぞれ担当。
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