踊る猫

海辺のポーリーヌの踊る猫のレビュー・感想・評価

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)
3.9
一見すると何気ない、取り立てて重要なことは起こらない映画のように見える。だが、彼女たち(と敢えて書く)の対話はスリリングであり、それ故に「あれはなんだったのか?」と核となる出来事の謎が「日常系」の謎として浮かび上がってくるように感じられる。ポーリーヌの肢体が下品ではなく、エロスも感じさせずに健やかに見えてくるからこの監督や制作陣の上品さないしは美学が伺い知れる。海辺の鮮やかな光景がきれいにかつ自然に撮られてて、ひとりひとりの登場人物にも愛着を抱いてしまう。ただ、個人的な好みの問題になるのだと思うが、メリハリに乏しいのがキツかった(これは私が恋愛経験に乏しく、かつ理解できないことも関わってくると思うのだが……)。子どもも、彼/彼女の中に一個の人格と哲学を持っており、故に大人の愚かしさと欺瞞を見抜いている。それでいて「大人は汚い」と単細胞的になじることもない。大人たちも子どもを尊重し、真摯に向き合っている。それはイヤミでもなんでもなく本作の美点だと思う。確かに、この路線は後の深田晃司『ほとりの朔子』に受け継がれているのかも(タイトルも似てるし)。
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