優しいアロエ

海辺のポーリーヌの優しいアロエのレビュー・感想・評価

海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)
4.0
〈案外あっさりとした15歳、ひと夏の恋〉

 新型コロナウイルスに見舞われている2020年は、“ひと夏の恋”の発生件数が例年よりも大幅に減少することが予測されている。刹那的で甘酸っぱい恋が地球に足りていない。今こそエリック・ロメールを観るときである。

 本作『海辺のポーリーヌ』は、ノルマンディーにバカンスにやってきた15歳のポーリーヌを中心とした恋愛群像劇である。フランス人の気質なのかバカンス特有の焦燥感なのか、みな異様に恋の展開が速い。経験が浅いため堅実になろうとするポーリーヌに対し、大人たちは次々とアヴァンチュールに身を委ねていく。物語もややポーリーヌを放置気味になってしまう。
 
 そんななか虚言と誤解が数珠のように連鎖していき、ポーリーヌに思わぬ悲劇が降ってかかる。このあたりは脚本の過剰な作為性を覚えるところで、伸びやかな夏の恋物語にふさわしかったとは思えない。本作は風景や人間模様の自然な豊かさを湛えており、そのぶん音楽や撮影に派手な技巧を凝らさず制御していたのがよかったのに、脚本だけ一人歩きしてしまった印象である。

 しかし、その後はおもしろい。最終的に誤解は解けるのだが、どうやらポーリーヌの恋は冷めてしまったようだ。ほかの連中も悪びれた様子なり誰かを責める態度なりを見せない。まるでこれまでの騒動がゲームだったかのように、あっさりとノルマンディーから退散していく。ここにはフランス人の軽やかさを見た。

 『君の名前で僕を呼んで』のような情熱的な物語を期待して観ると呆気にとられるかもしれない。アマンダ・ラングレは目を見張るほど可愛い💕
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