滝和也

刺青一代の滝和也のレビュー・感想・評価

刺青一代(1965年製作の映画)
3.9
赤き鮮血の如き光
驚愕の心に刺さる稲光
蒼き冷血なる光、
縦横無尽に流れる
カメラワーク。
清順美学の極みなる
殴り込みシーンに刮目せよ!

「刺青一代」

今で言うなら真麻パパ、高橋英樹さん主演、鈴木清順監督の日活任侠物です。デビュー時の高橋英樹さんは日活の任侠路線を支えた役者さん。桃太郎侍の前ですね。

奴の鉄(高橋英樹)は対抗組織の組長の命を取るが、仲間に裏切られ窮地に。その窮地を救ったのは美術学生だった弟、健次。二人は満州へ渡ろうと日本海に面した街に流れ着く。水道工事の飯場で働く彼らだが、渡世の義理は彼らを逃してはくれず…。

比較的、前半は普通の映画です。前半部で気になるのは飯場の親方(高品格)と鉄の大喧嘩。これジョン・フォードの静かなる男を想起させます。緑の綺麗な水車小屋の使い方もさり気なくて、良いんですが…、

任侠ものと言えば後半の殴り込みシーン。その直前の急展開から風雲急を告げる訳ですが、演出も清順美学が爆発します。赤い雲、赤い光の入る部屋、血と怒りを連想させます。そして雷鳴、豪雨。横スクロールのワンカット長回しによる道行き。そして…青・白・黄色の襖を開けながら、奥へ向かう鉄を追うカメラ。横スクロールの長回しの殺陣。そして一瞬の暗闇に火を吹く銃口、赤いフラッシュがたかれます。そして俯瞰で長回しする殺陣、怨敵との一騎打ちはなんと奈落からガラス張りの床を通してのカット。そこから雷鳴たなびく雨の中の殺陣。着物がはらりと斬れ、背中の刺青が大写しになると言う、流れるようなカメラワークとアイデアに富んだ構図、美しすぎる色彩に美しすぎるシークエンスが描かれます。

このシーンまでは、上手い作品で特徴もないし…位に感じてましたが、最後に鈴木清順ならではの美学が炸裂。満足できますよ(^^)

追記 女優さんはこの二人にご注目。高橋英樹を好くのは、和泉雅子。鉄火肌の姉御を気取るお嬢さんですが今で言えば真野恵里菜さんかな。そしてもう一方は松尾嘉代さん。若い頃はホントに綺麗ですわ。アンニュイな感じの女給ですが、色気が半端ない(^^) 後弟健次が横恋慕する奥様が出てくるんですが…こちらはイマイチでした…。
滝和也

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