あなぐらむ

眠狂四郎 卍斬りのあなぐらむのレビュー・感想・評価

眠狂四郎 卍斬り(1969年製作の映画)
3.7
松方弘樹版狂四郎の第二作(一作目「円月殺法」は 森一生 )。
ヒロインは大映五人娘の南美川洋子さん。薩摩藩からの間者騒動(この間者が南美川さん)から、京へ向かう狂四郎の性と暗殺のキャノンボールが始まるロードムービー。
脚本は名手・依田義賢。

狂四郎ガールズには笠原玲子や松岡きっこ、ちょっと変化球な狂死郎フェチ(背に狂四郎の刺青!)のしめぎしがこ。
薩摩隼人暗殺団の赤髪の美剣士に扮した若き田村正和が個性を見せる(本作が原作者の目に留まり、テレビ版に主演)。松方さんの狂四郎は、雷蔵より甘さがありつつニヒルさもあり、東映俳優らしい舞う様な殺陣が美しい。

池広一夫は徹底的にノワールな画作りを見せ、様々な横移動を使用した殺陣の設計、階段を活かした縦の構図、示現流故の直線的な闘い、と変化に富んだ剣劇を楽しませてくれる。
松方さんは歌も聞かせ、中々見応えある娯楽作品に仕上がっているが、池広さんも回想するように雷蔵に寄せ過ぎた所もあって、シリーズ継続とは行かなかった。松方さんはこの時期は大映にレンタルされており、日活テイストの作品(「皆殺しのスキャット」森一生)もお相手は南美川さん。

南美川さんは日本髪に着物でもアイドルテイストが漂い、松方さんの相手役としては少し若い感じもあるが、それ故、狂四郎が心を許す女性として納得もいく。多くの女性が登場するが、皆個性的であるのは依田脚本の筆力か。