あなぐらむ

薔薇の標的のあなぐらむのレビュー・感想・評価

薔薇の標的(1972年製作の映画)
4.7
加山雄三の東宝におけるガンアクション、というよりも監督・西村潔の一つの到達点ではないか。世評は全然良くないが、俺の観たい「和製殺し屋映画」の要素が全てあった。音数も少なく、観念的な部分もあるが、それには意味がある。
岡田英次のカリスマ、クールなトビー門口もよい。
強い父性、カリスマ性に惹かれていく若者を描くのは、増村保造の演出じゃなくて、脚本家・白坂依志夫の特性なんじゃないか、と思った(これはお父様との関係もあるのか)。ただこの頃に「野獣都市」も似た構図なんだよね。
これは「戦後」を生きる世代の、上の世代への屈折なんじゃないか。

この「薔薇の標的」はとても面白い映画だが、「分かる」のかと言えば白坂さんと桂さんの意図は、今でいう「ふんわり」としか分からない。
そもそも、物事に対して「分からない」という事をこそ、是とするべきではないのか。「くだらない」の上位互換ではなく。
そういう、映画の観方を考えるテキストになる一本だと思う。
※ソフト化されるようです。