カテリーナ

悪夢探偵のカテリーナのレビュー・感想・評価

悪夢探偵(2006年製作の映画)
3.6
謎のキャスティング

塚本晋也の世界へようこそ
入って行くまでそれはそれは長いこと
拒み続けて でも完全に無視する事もできない 悪夢探偵という映画
タイトルからして怖い
冒頭のシーンからして怖い
灰色の部屋の薄汚れた壁にかかる
長い黒髪 怖い
そのシーンを見ただけで無理と
停止ボタンを連打
それから11ヶ月も経ってしまった

他人の夢の中に入り込んで 悪夢の正体を突き止める そんな特殊な力を持ってしまった
影沼京一(松田龍平)が
キャリア刑事の霧島慶子(hitomi)同僚の関谷(大杉漣)と若宮(安藤政信)
と共に殺人事件に巻き込まれる
密室での若い女性と
夫婦の寝室での夫の惨殺死体 両者とも鋭利な刃物で切り刻まれ部屋は血の海と化す
ふたつの事件は側に携帯電話が落ちていて 死ぬ直前まで誰かと通話していた履歴が残っていた 「助けて」という声が会話の中にシンクロしていて自殺ではない証拠となり捜査が難航する

重くて無彩色ないつもの塚本ワールド
『六月の蛇』を彷彿とさせる
湿った浴室の滴り落ちる水の音 夢の中で
水中に落ちて深く沈んで行く姿が何度となく映し出されるが意味がわからない
松田龍平も安藤政信もそんな雰囲気にピタリと嵌る
そこで長い脚を惜しげもなく晒し
モデルのように殺人現場を闊歩する
霧島刑事のhitomiに違和感 台詞を発した途端 塚本ワールドがぶっ壊される
お願いだから喋らないでと願う

しかし彼女の起用に疑問が残るものの
ホラー映画では可愛い女子が抜群のプロポーションを披露しながら恐怖に歪んだ顔で
絶叫する様を楽しむのも有り そんなよこしまな思いで彼女を追って行くと 次第に良い表情をしていることに気付く
塚本監督が彼女のアップを多用するのもわかる 美しいつり上がった形の整った眉
に見惚れているとお話しはいつの間にか訳がわからないまま シリアルキラーの
監督ご本人と悪夢探偵の一騎打ち
説明台詞も皆無の状態で映像だけで紐解くにはやや、難しい が、人間誰でも一度は死に憧れる瞬間がある それを引き出されて やがて恐怖に支配されその思いが肥大して行くそれが弱点になる 相変わらず痛いところを突いてくる絶妙な脚本に目に見えない何者かに追われる時の編集が秀逸

死にたいと願うのは自分の前に立ちはだかる壁や深い悲しみや痛みから逃れたい
一心で 抱えている苦しみを終わらせたい
と救いを求めるのだ それも何処かしら他人事で じぶんの人生さえ終わらせるのは
人任せだったりする そんな中途半端な気持ちが 土壇場で翻り助けてと懇願するのだ
結局最後は自分との闘い
悪夢探偵はそんなに易々とは助けに来てくれない
カテリーナ

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