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トップをねらえ! 劇場版のtetsuのレビュー・感想・評価

トップをねらえ! 劇場版(2006年製作の映画)
4.2
エヴァの予習も兼ねて、去年の暮れに完全版の劇場公開があったため、鑑賞。


[概要]

エヴァンゲリオンシリーズの総監督・庵野秀明さんが初期に手掛けたロボットアニメ『トップをねらえ!』(全6話×約30分)。その尺を半分に、物語を凝縮した総集編。


[感想]

世に知られざるSFアニメの大傑作。
実は、ゴリッゴリのSF作品(映画のみならず、小説なども含め)オタクである庵野監督が、自分の好きな作品を詰め込んだ結果、生まれた奇跡の一作。

『インターステラー』で驚かされた「時間」を踏まえたSF的展開が、25年前の本作で、すでに使われており、ただただ驚愕……。とにかく、めちゃくちゃ面白いです。
(監督の代表作『エヴァンゲリオン』同様、男性へのサービスシーン的な演出は健在なので、その点は、要注意かも。)


[コピーの天才・庵野秀明]

『エヴァンゲリオン』で多くのファンの心を掴み、『シン・ゴジラ』で、より一般層にも広く知られるようになった庵野秀明監督。

今でこそ、日本を代表する映画監督の一人として活躍し、作家性の強い作品を産み出しているようにみえますが、その作品群の根本には、SF作品や特撮・名作アニメの蓄積があります。

知人である押井守さんが、彼を「コピーの天才」と称したように、とりわけ、初期の作品群*には、オマージュ要素が色濃く残り、本作は、その当時の頂点とも言えるもの。
*当時、所属していた自主映像の制作団体"DAICON FILM"では、『帰ってきたウルトラマン』をコピーした作品や、アメコミヒーロー・ゴジラ・戦隊ものなどを総登場させた、さながら『レディプレイヤーワン』な短編アニメ映像(後にドラマ『電車男』のOPでオマージュされることに。)を制作している。

『宇宙戦艦ヤマト』や『風の谷のナウシカ』、『サンダーバード』の小ネタに、『エースをねらえ!』から拝借したスポ根展開の数々、さらには『日本のいちばん長い日』に影響を受けた、矢継ぎ早な役職テロップ表示(これは『シン・ゴジラ』にも繋がる)などなど。

それらが比較的コミカルに引用され、クライマックスのシリアス展開で、思わぬ大団円を迎える内容のアツさに心を奪われました。


[エヴァンゲリオンの原点として]

また、エヴァンゲリオンシリーズが制作された現在の視点から観ると、その原点となる要素も多々。

近未来の世界を舞台にした設定や、何の変哲もない高校生に世界の命運がかかる展開はもちろん、メッセージビデオの"反復"や、クライマックスのハイセンスな"手抜き"演出w、さらには、『…Q』を彷彿とさせる2人乗りロボットから『浦島太郎』的な"時間省略"展開など、エヴァロスの方には堪らない作品だと思いました。


[終わりに]

最近、エヴァンゲリオンにハマった人はもちろん、SF好きにもおすすめしたい本作。

普段、ロボットアニメをみない人などにこそ、強くおすすめしたい娯楽アニメの傑作でした。


参考

映画監督の押井守が『シン・ゴジラ』と庵野秀明を痛烈に批判!? - ひたすら映画を観まくるブログ
https://type-r.hatenablog.com/entry/20160911

「今のアニメはコピーのコピーのコピー」「表現といえない」 押井守監督発言にネットで納得と逆ギレ - ライブドアニュース
https://news.livedoor.com/article/detail/6053012/
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