円柱野郎

銀河英雄伝説外伝/新たなる戦いの序曲(オーヴァチュア)の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

田中芳樹の同名SF小説を原作に「アスターテ会戦」に至る事情と決着を描いた劇場版第2作。

劇場版1作目の「第4次ティアマト会戦」の後から話が始まり、OVA1期のオープニングである「アスターテ会戦」をリメイクしているわけだけど、映画単品で観た場合に“銀河帝国”“自由惑星同盟”“フェザーン”の地勢や立場などの説明がほとんど無いのは前作と同じ。

ただ、前半はラインハルトとヤンそれぞれの人物としての立場をクローズアップして描いているので、お互いに敵対する組織に属しているのかが分かる程度でもストーリーを追う上ではあまり支障が無いし、事実、要点を上手くまとめていると思う。
特にヤンとラップとジェシカの三角関係の描き方は、台詞を廃してキャラクターの表情や演技だけで感情を表現させるなど意欲的であるし、それだけでヤンという人物の人となりが掴めてしまうというなかなかの凝り様だった。
もちろん、リメイク部分も含めて本編で語られたエピソードが色々と出てくるので、原作なりOVA本編を知っている方がさらに楽しめるのは間違いないけど。

作画は劇場版ということもあってか全体にOVA版よりも細かく描き込まれていて、特に艦隊戦あたりなどは結構気合いが入っているのが分かる。
布陣の模式図などもなにげに3層で描かれていたりと芸が細かい。
しかし何よりも、その「アスターテ会戦」時におけるラインハルトの戦術眼と、“軍事的ロマンチズム”に陥った一部の同盟司令達、そしてヤンの“負けない戦い”など、チェス盤での戦いを見るかのような展開の妙を楽しめるのもこの「銀英伝」の魅力だよね。

そういう戦場での駆け引きも描きつつ、キャラクター達の人物像もしっかり描いている本作は、「銀英伝」の魅力を描いたという意味で劇場版1作目よりも成功しているのではないかなと、個人的には思うところです。
円柱野郎

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