円柱野郎

哀れなるものたちの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ロンドンで女性が自殺した。
ゴドウィン・バクスター博士はある方法で彼女を蘇らせ、ベラ・バクスターとして"保護"するが…。

奇抜な物語だとは思うけれど、着地点はわかりやすく、共感もできる。
これは人間の解放の物語ですよね。
メタファーとして"女性"と"性"についての要素が強く出てけれど、社会通念の中にある縛りのようなものからの脱却が描かれている様に思う。
主人公の女性ベラは冒頭で白痴の様に登場するけれど、その実は胎児の脳を移植された大人の体の人物という、いわば"フランケンシュタインの怪物"の様な創造物。
頭が子供であるがゆえに通念的な因習に対して行動が自由だということに説得力のあるキャラクターであり、その目を通して世界が描かれていくわけですね。
この構造はとても上手くできていたように思う。

映画の序盤は白黒映画。
たまに広角レンズを通したような画にもなるし、そういう意味でも奇抜さを感じる。
中盤で旅に出てからは色彩鮮やかな画面になるのだけど、結局のところその映される映像はベラの世界に対するイメージということなのだろう。
広角レンズの画面の窮屈さは"囚われ"であることの表現型だろうし、画面に色がつくのは世界の広がりの表現型というわけだ。
世界観を形作る美術も作り物のような造形が独特な雰囲気を出していて面白い。
主人公の"新しいものにふれる体験"を観ている側にも伝えてくる感じだろうか。

作品的には"性"が前面に描かれていて、それが故に日本ではR18+指定になっているわけですが、年齢制限を厳しくしてでも映画にボカシを入れなかった配給はエラいと思う。
セックスが描かれまくっているけど、別にエロいわけでは無いし、テーマにとっても大事だしね。

主演のエマ・ストーンは中身が子供の大人を見事に演じていたと思う。
博士役のウィレム・デフォーもさすが。
でもこの映画の一番のお気に入りは放蕩なウェダバーン弁護士役のマーク・ラファロ。
女を遊んで捨てる様な嫌なキャラクターかと思いきや、ベラに振り回されて破滅してく様が実にコメディでしたね、笑ってしまったw
円柱野郎

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