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マタンゴのkoyaのレビュー・感想・評価

マタンゴ(1963年製作の映画)
4.0
名作誉れ高いこの映画、やっと観ることができました。
話には色々と聞いていて、レンタルで探してはいたのですが・・・なかなかね、こういう特撮ものは、根強い人気を誇っており、まぁ、わたしはマニアックなお話は出来ませんしね。

 ただ、わたしは本多監督の映画は初めて、だと思っていたら(子供のころ、ウルトラQとか帰ってきたウルトラマンは記憶なし。特に怪獣好きの子供でもなかった)『ミラーマン』の監督をされていて、びっくり。
いや、ウルトラセブンとミラーマンはよく見ていて、覚えているんですね。虚を突かれた感じがします。

 さて、これは大人の映画ですね。普通、子供が出てきたり、地球防衛軍とか、子供のヒーローになりそうな、かっこいい人たちが出てくるのに、この映画は男女7人がヨットに乗って漂流・・・のいわば漂流もの、サバイバルものでもあるわけです。
アーサー・ランサムの本みたいなリアルさがねぇ。いいですね。
乗っていたのは、金持の息子や作家や歌手といった大人たち。

 それが、謎の島にたどりついてからの心理戦・・・というのが見事ですねぇ。だんだん人間の醜さが全開になっていく。
仲間割れ、恋愛、そして・・・・・島には何も食べ物がないのに、たくさんある「マタンゴ」というらしいキノコ。
ヨットのオーナーは、ぼんぼん金持社長息子で、船長が小泉博さんなのですが、雇われ船長・・・何かとリーダーシップとるものの、ばらばらになってしまう7人の様子がとても丁寧。綺麗事なんてなくて欲むきだしになっていくところ、迫力。

 じわじわじわじわ・・・・マタンゴを食べた人間はキノコ人間になってしまうものの、それは放射能の実験のせいなのだ、というこれまた、大人向けの批判精神も持っているし、さて、無事、生還したところで・・・・マタンゴを食べていたほうがよかったのか・・・東京という街は一種のマタンゴなのではないか・・・という・・・ラストの余韻の出し方。

 マタンゴを食べると女の人は妙にお肌ツヤツヤになるし・・・・キノコ好きのわたしは、一番先にマタンゴの誘惑に負けていると思いますよ。
まぁ、マタンゴの誘惑というのは、色々なものを彷彿させて、先の読めない展開で、密室演劇のような演技合戦にもなっていました。
マタンゴもいいけれど、わたしは、人間の心理葛藤の部分にとても感心しましたね・・・。
でも、雨が降って、むくむくむくむく・・・・キノコ・・・マタンゴが大きくなっていくところなんて、素晴らしい美術です。
いや、観てよかったですね。
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