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バベットの晩餐会のkoyaのレビュー・感想・評価

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
4.5
この映画の底にはものすごく強い信仰心があります。

ただの美食映画ではなく、信仰映画ともいえると思います。
ユトランド地方の貧しい村で神父を父に持つ独身の老女2人は信仰に生きています。
灰色の海、石造りの粗末な家、素朴な料理。



彼女たちの家にはフランス人のバベットという家政婦がいて、フランス革命を逃れて流れ着いた女性。

前半は姉妹2人の若い時代を描き、後半は、宝くじに当たったバベットが父の生誕100周年の日に村の信者の人々にフランス式のフルコースの晩餐会を開きたいと申し出でます。

フランス料理など知らない村の人々は何を食べさせられるのか恐れ、食べ物について話さないと事前に打ち合わせします。

しかし、出てくる料理は素晴らしく、若いころ老女に恋をした士官が今は将軍になって、招待客としてやってきます。

何も知らない将軍は料理のすばらしさを語りたいところですが・・・・・・

先日観た『ポトフ』に通じるものがあるのですが、後半はひたすら料理を作るバベットとそれを味わう老人たちしか出てきません。

しかし、年寄りの村でだんだん狭い人間関係がぎすぎすしてきたのですが、おいしい料理が次々と出てくると皆、至福の顔になる。

老いた将軍が若いころ恋した今となっては老女となった妹にかわらぬ愛の告白をするところは涙が出てしまいました。
結婚して、子供を産むだけでなく、距離は離れていても、年月が経ってもいつまでも想っています、なんてロマンチック、浪漫ですね。

そして、信仰心も高まり、料理によって人は幸福を得て、信仰心はますます深くなり、人々の心に余裕がでてくるのを丁寧に描きます。

若かったら料理だけの映画と思ってしまったかもしれませんが、今の年、老年と言ってもいい年になると出てくる村の人々のあれこれが身近に感じられ、そして信仰心を素直にここまで描けるのか、と感心します。

年をとってから観る映画というのもあるわけで、そんなに多くはないけれど、見事な老年映画であり、信仰映画だと思います。

ちょうど、TOHOシネマズの午前十時の映画祭で上映中だったのですが、用事で家を出られず、prime videoで鑑賞。
こういう小さな名画を配信してくれるところ、うれしいです。
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