戦争に勝者はいない、というのは台湾総督になられた方のスピーチですが、日本ももちろん敗戦国として被害があったけれど、同時にアジア諸国と戦って加害者でもあった。それを現代の私が見るのはとてもつらいことだけれども目をそらしてはいけないと思う。
映画やドラマで日本軍が敵になるとすぐ反日だと言う人がいるけれど、この映画は確かに日本語を強制するのは日本軍で、自国語を守り、辞書を作ろうという人にとっては敵かもしれない。
しかし、描き方が「日本人が憎い」というより「戦争が憎い」という描き方だし、スリをしていた文字の読めない男がよりによって辞書つくりの手伝いをすることになり、文字を覚える喜びがメインになっているので、物語の作り方が上手いと思います。
確かに日本人憎し、の感情で作られたドラマや映画もあってそれは明らかに反日映画、ドラマなのだけれども、この映画が描きたかったのは自国の言葉を守る、継承していく、その感動的な姿であって、それは素直に感動できるものでした。
特に、規制が厳しい中、辞書には方言も網羅したいというときに、スリの男が刑務所仲間を集めてきて、各地の言葉を教えさせるといったアイディアなどコミカルでもあるし、スリを演じたユ・へジンのがさつだけれど、情に厚いところ、行動力があるキャラクターがとても活きていると思います。
なかなか日韓の関係は根深く難しいものがあるけれど、こういったよく出来た映画を単に「反日映画」と切り捨てるのはもったいない話です。
少しでも、歩み寄りや理解の努力をしていきたいと思います。
