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王の願い ハングルの始まりのkoyaのレビュー・感想・評価

4.2
ソン・ガンホの映画が観たくて探した結果、観ることになった映画。
ソン・ガンホさんの役の幅の広さをしみじみと感じます。

今回は朝鮮第四国王世宋、王様役です。
タクシー運転手、警官、パイロット・・・・・・なんの役をやっても役になりきれる素晴らしい俳優さんのひとり。

ハングル文字は人造文字だ、ということは知っていたのですが、具体的にどうだったのかは初めて知りました。

当時は中国、明の時代で朝鮮ではごく一部の官僚のみが漢字が読み書きできるだけ、という民に文字のない時代。

できるだけ簡素な文字を作って、民に知らしめたい・・・・・・という願いがありますが、文字を作るにあたって推薦されたのは、仏教の僧。

朝鮮は儒教の国であり、仏教徒は何かと迫害されがちなところ、世宋王はかまわず文字を作ることを命じる。

できる人が少ない漢字の世界、狭い世界であれば民は無知だけれど、文字を知ってしまったら、団結してしまうかもしれない。
中国の明に仕える国としては、漢字以外の文字を作るなど論外。
そして、一番が儒教と仏教の対立。

文字を作るまでも大変でしたが、それをなくすことなく周知徹底させる方が大変なのだ、という言葉通り、何もかも難航します。

朝鮮時代劇では国王は暴君だったりしますが、この映画の世宋王は争いを好まず、いつもゆっくり話し、もう老齢で病気もある、最後の使命が文字を民に伝えること、という苦渋の国王ぶりが良かったですね。

ハングルを今、習っていて、陰陽五行説から作られている、とあったけれど、実際、なるほどこうして作られたのですね、とわかるのです。

文字はシンプルでも、活用はラテン語に次いで多いと言われる言語だから、文字簡単=簡単な言葉ではないのですが、陽母音、陰母音など勉強にもなりました。

王の願いは、出来上がった文字(訓民正音)が、自分の死後もきちんと民に伝わり、反対派から握りつぶされたりしないこと。

言葉は変わっていくけれど、やはり言葉の成り立ちをきちんと知っておくことは大事だし、言葉の背景には文化や思想がある、ということを改めて感じた次第。

撮影がとても美しく、ロケなども壮大。冬の寒さなども美しく描かれていました。ただの堅苦しい映画ではなく、観ていて歴史を眺めているような気持になる映画。
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