すずき

ソドムの市のすずきのレビュー・感想・評価

ソドムの市(1975年製作の映画)
3.0
1944年、ナチス占領下のイタリアの町サロ。
そこに集まったのは、大統領・公爵・最高判事・大司教という最高権力を持つ4人。
彼らは町から若者を集め、男女9人ずつを選び、邸宅へと連れ去る。
権力者たちは、自らの飽くなき性的欲求を満たし、またその探求の「道具」にする為、毎夜邸宅に集うのだった。
そこでは通常のセックスを禁じ、異常な方法でのみ交わる事を許される、狂った乱交集会。
3人の語り部女たちがアブノーマルな淫話を語り、それを聞きながら交わる狂気の宴は、日毎にその異常さを増していく…

変態文豪マルキ・ド・サドの未完の原作小説を第二次大戦下のイタリアに舞台を変更した、パオロ・パゾリーニ監督の代表作にして遺作の、変態映画の金字塔。
この作品をお気に入りに挙げる監督には、ジョン・ウォーターズ、ギャスパー・ノエ、ミヒャエル・ハネケと、お察しの連中。
しかし、見る者の気分を悪くさせる映画だが、あからさまに「モロ」な露悪的描写は少なく、文学的なムードに溢れている。

面白かったのは、変態権力者4人の欲望のはけ口が、攫ってきた若者だけに及ばない所。
部下である兵士の穴にも突っ込み、権力者たち同志でも平気で突っ込む!突っ込まれた方も悪い気分ではなさそうだ!
それでも良いならさ、お前ら4人でやってくれよ!

映画は時間の経過が曖昧ではあるけれど、ひと月ぐらい経っているのかしら。
30日かけて、この世の地獄を味わい尽くす、刺激的なひと夏のバカンス。
映画はその楽しみが最高潮に達した所で、彼らの部下である若い兵士達の何気ない会話を写し、やや唐突に終わる。
悪に加担している彼らも、家族や愛する人がいる「普通」の人間だ。
ヒトラーは市井の人々の投票により、民主的に選ばれたというが、そういった「普通」の人々の悪を批判している…ってコト?
それとも、悪趣味映画に金を出して(間接的に加担して)見ている視聴者を皮肉ってるのかな。