恭介

サルバドールの朝の恭介のレビュー・感想・評価

サルバドールの朝(2006年製作の映画)
3.6
スペインの歴史的背景を鑑賞者が知っているという前提で創られているのか?

または敢えてその部分を省略し、鑑賞後にもこの実話に興味をもたせ各々で深く知って貰う為の手法なのか?

監督の意図は分からないが、映画として観た場合は少し説明が不十分な気がした。
前半、サルバドールと仲間たちがとる行動は、若気の至りにもうつる。
独裁政権に対する怒り、が見えてこないのだ。それが最後まで何処かで引っかかり、感情移入するのを阻害してしまう。

確かに、不当な裁判による死刑判決というのは理解出来る。ああいう酷い拷問器具のようなモノで物置みたいな場所で死刑を行うというのもショッキングだ。

しかしあれだけ周りの人々が死刑をなんとか阻止しようと懸命に行動してる背景も伝わりにくい。

死刑判決が出てからラストまでをかなり時間をかけてジックリ描いているのは見応えはあるし、サルバドールと弁護士、姉妹や看守との交流も出演者の素晴らしい演技で胸を打つ。

しかし、やっぱり何か引っかかり最後まで取れなかったのが悔まれる。

こちらの勉強不足なのは分かるが、真実を伝え、悲しい歴史を風化させず、未来への糧となる物語を広く伝えたかったのであれば、サルバドールの体制に対する怒りや悲しみ、憤りを前半にもう少し伝えて欲しかった。
恭介

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