このレビューはネタバレを含みます
1984年制作、ロバート・ベントン監督によるアカデミー主演女優賞、脚本賞に輝いたヒューマンドラマの傑作である。
ロバート・ベントン監督といえば1979年の「クレイマー・クレイマー」でも人の心のヒダに触れるような細やかな演出で映画に奥行きを出していたが苦境、逆境からの再生を描かせたら絶品の味を出せる名監督の一人だと思っている。
1930年代世界大恐慌下の人種差別顕著な米南部で一家の大黒柱たる警官の夫を事故で失った幼い二人の子供を抱えた女性の苦難に満ちた自立・再生の物語である。
夫は酔っ払った黒人少年の乱射した凶弾に倒れたのである。当然のごとく白人達による集団リンチの後、ビリー・ホリデー謳うところの「奇妙な果実」となって木に吊るされる。
健気に自立を試みようとする女性サリー・フィールドに銀食器泥棒のダニー・グローヴァー、盲目の家具職人ジョン・マルコビッツらと心許ない同居生活が始まる。
ダニーの経験から綿栽培に乗り出すがK.K.Kの妨害や竜巻紛いの嵐に遭いながら人種も関係なく家族として団結していく。
不思議なのは観ている観客も団結の一派に加わっていくことだ。
懸賞金が出る一番入荷を目指し、夜討ち朝駆けの重労働の末に全員で全うする様は力が抜け達成感で満たされる。
最後の教会のシークエンスでは時空を超えたキャスト総登場の祈りが希望への爽やかな風を誘う。