ジョージア映画祭6本目。
妙に軽快な劇伴がミスマッチなまま印象に残る『インタビュアー』でしたが、内容は結構難解だった気がする。まぁ割と寝てしまったので気がするとしか言えないのだが…。しかし難解と言えば何となく高尚で凄い作品という感じもするのだが、正直そんなに面白い映画でもなかったなー、という作品でもありましたね。
いや別につまんないってことはないのだが、これは俺が今までに観たジョージア映画に大体共通することとしてあると思うんですがまず娯楽作品として練られたプロットや脚本のものというのが少ない。要は起伏に富んだ面白おかしいハリウッド映画のような構造の映画というのはまぁほとんどないんですよね。まぁその分監督のアーティスティックな面が尊重されるし、こっちとしてもそういうものを求めてジョージア映画を観に来ているわけだからそれはそれでいいんだけど、本作はそういうところを分かった上で臨んでもちょっと難しい映画だったなぁー、という印象は受けましたね。
お話は『インタビュアー』というタイトル通りに女性新聞記者が主人公で彼女がお仕事として接する様々な取材対象や家庭での彼女の姿を描いたものです。まぁ、大体それだけの映画だね。そういう設定で一般的な娯楽映画なら主役の新聞記者が様々な取材を重ねていくうちにそれらが一つの事件に収斂されていき、そこには権力者の陰謀があった…というような展開になりがちなのだが上記したように本作でそういう面白くなりそうなものは一切ない。ストーリーが展開していくというよりもただ淡々とシークエンスが重ねられていくというだけで、いわゆる先が気になるというようなことは全然と言っていいほど無いんですよね。
しかしそれとは真逆に監督の主張的な部分はこれでもかと言うほど細部に詰め込まれていて実にメッセージ性の高い作品にはなっていると思う。これは本編を観ながらもそういう要素があるんだろうなぁー、と思っていたが観た後に作品の紹介文を読むと思った通りに本作は制作年である1978年当時のジョージアにおけるフェミニズムの文脈を描いたものでもあるとのことだった。まぁでもそこは分かるんですよ。監督自身が女性であることとインタビューの対象が女性ばかりであること、そして主人公の仕事であるインタビューと比して家庭内での彼女の立場の描かれ方とかを観ると、まぁ社会における女性の立ち位置を問題にした作品だろうなというのは分かる。それはもう冒頭のシーンからしてインタビュアーとインタビュイーとの関係性が反転して取材者自身への問いかけとなっていることからも察することができる。また感想文の冒頭に妙に軽快であるがミスマッチな劇伴が使われる、と書いたがそれも使われ方が面白くて劇伴のメロディーがブツ切れになるようにして使われてるんですよね。それは当世風のかっちょいい音楽を使いながらもそれは単なるファッションであって、実際の当時の女性がそんなにかっちょいいものではなかったというようなこれまた印象を反転させるような演出意図があったのではないだろうかと思う。
要はまぁ当時としては結構先進的なフェミニズム映画であるというのは間違いないと思うのだが、しかしそこは正直当時のジョージアの社会を知らないと分かりづらいだろうとも思うんですよ。大抵の映画ならそこを噛み砕いて分かりやすくするために物語の力を借りるのだが、上記したように本作はそこが弱い。この新聞記者の物語はどこに向かうのか? という俗な興味を惹かせるような要素が全然ないんですよね。まぁそこは後で見たラナ・ゴゴベリゼ監督の本作よりも過去に撮られた作品を観ればちょっと腑に落ちたところもあるのだが、少なくとも本作を観た時点ではそれは知らないので面白さは薄い映画だなぁと思ったのでした。まぁ確実に10数分以上は寝ているので俺が面白いところを観逃しているだけという可能性もあるが…。
まぁジョージアに於けるウーマンリブの流れを知ってる人とかラナ・ゴゴベリゼ監督の作品を順に追っている人なら楽しめるだろうが、しかしそれでも娯楽としての面白さはほぼないよな、とも思う。まぁそうは言いながらも映像そのものはかなり格好良かったのでその辺を割り切って観れば観どころのある映画ではあると思いますが。