踊る猫

ワン・デイ 23年のラブストーリーの踊る猫のレビュー・感想・評価

3.8
侮れないな、と思った。一見すると人生のキレイな要素だけを煮詰めたようなスタイリッシュな(それでいて、ギミックに頼っていない骨太な)映画のように感じられる。しかしその影では使われる音楽がちゃんと時代を反映しているし(ブラック・グレープまで持ち出したのは渋い!)、主人公たちのカッコ悪い青春も描き切っている。夢多き時代から始まって、社会に出て泥臭い努力を時に汚れ役も引き受けながらこなさなければならない時期を描き、そして自分の思い描いていた夢と現実がかけ離れてしまう迷いを描き、それでも自分の人生を自分で引き受けて生きる成熟を描く。なるほど、どれも表層だけで文学的な深みがないと言ってしまえばそれまで。だが、ロマンスというジャンルにパッケージングしてこれだけのテーマを盛り込んだ誠実さは買いたい。実は「大人向け」の難易度の高い映画と見た。そして、「ワン・デイ」は訪れる。その日が来ることがわかっていれば……などと野暮なことは言うまい。その日が来るから全てが無駄であるなんて、そんなこと誰にも断言できないのだから。
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