映画文化を花開かせた
サイレント映画への
郷愁と賛辞、そして愛
こだわり抜いた
演出と演技。
アカデミー作品賞に輝く
「アーティスト」
2011年制作のよもやのサイレント映画。サイレントからトーキーに移り変わる1920年代から30年代のハリウッドを描く内幕ものであり、サイレント映画の中心であったメロドラマです。
サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンはエキストラの女優の卵ペピー・ミラーと知り合う。彼女の明るい魅力に気づいた彼は作品への出演を後押しし、女優になる為のアドバイスをする。その後、ペピーは着実に役を得ていく。そんな中、トーキーが導入。サイレントをアートとして拘ったジョージは、自作で大きな借金を作り、破産。トーキーで水を得た魚の様にペピーは大スターになり…。
落ち行く男と登り行く女の純粋な愛を描いたメロドラマです。サイレントへのオマージュ、そして古き良きハリウッド黄金時代のロマンティックコメディを現代に蘇らせたと言っても良い。またミュージカルもその1つですよね。
サイレント時代のオマージュとしてダグラス・フェアバンクスやキートンの様なアクションも撮影され、主役のジョン・デュジャルダンは正に雰囲気ピッタリ。パワフルかつ軽快な動き、ステップはジーン・ケリーを思わせますね。監督さんの奥方であるヒロイン、ベレニス・ベジョもコケティッシュな表情や大胆な踊りも素晴らしい。後、愛犬が主役級の活躍を見せてますから、ワンちゃん好きにはたまらない。正に名演技です。
キートンやチャップリンはサイレントにこだわっていたし、またキートンはトーキーに合わなかったらしいですし、その辺りのオマージュもあるようですが、残念ながら、そこ迄サイレントには流石に詳しくない…(T_T)
ただ確かに演技法が違うのは間違いないし、なんとなく分かる。話さないでわからせるのは字幕だけでは無いですからね…。少し大げさにするのは台詞でも出てきたし。そのあたりをサイレントでやるアイロニーもあって。また俳優さんたちは正にそのメソッドでやっているのがまた素晴らしい。違和感ないですからね。
かえって、普通のお話なのに染み入るように伝わってきますし、そこに被る音楽もまた印象に残るし、素晴らしいものだと思います。
映画への愛や先人たちへの尊敬、外国作品でありながらもハリウッドへの愛を感じる作品にアカデミー会員さんはノスタルジーの世界へ引き込まれたのでしょう。アカデミー作品賞含めかなりの賞を取った作品です。どちらかと言えば奇をてらった佳作なのですが、愛が伝わったのだと思います。作中のペピーの一途な愛のように(^^)