砂場

マックス、モン・アムールの砂場のレビュー・感想・評価

マックス、モン・アムール(1986年製作の映画)
4.3
🎥🎥🎥日本的なものを常に批判しつつも、日本的な主題が多い大島渚が非日本人スタッフと撮った非日本的な映画。これが結構うまくいっている!

ーーーあらすじーーー
■エレーヌから妻宛の電話を取る男(アンソニー・ヒギンズ)、
今は妻はいませんが。
妻はエレーヌの家に行くと言っていたが、、、
そこに妻マーガレット(シャーロット・ランプリング)が帰ってきた
夫は外交官
■怪しんだ夫は探偵を雇い調査。
奥様はアパートを借りています、毎日そこに行っています
相手は誰だ?わかりません、彼は外出しないのです、、10日も、、
重病、有名人、警察を恐れているか。そこに夫の恋人らしき女(ダイアナ・クイック)が
ピーターは探偵に鍵🔑をもらい、妻のいるアパートに行ってみる
部屋には妻が裸でベッドにシーツを捲ると、チンパンジー🐵がいた、、
■レストランで二人話し込む、ピーターはマーガレットに彼は恋人か??と聞くと、ウイ、、君は正気か?閉店時間よ帰りましょう、、性生活はどうなんだ、、、
じゃああなたとカミーユのセックスライフは?それとは違う、同じよ、、
困り果てたピーターは、チンパンジーのマックスと一緒に暮らそうと提案し、当初は論外と言っていたマーガレットも
連れてくることにした。奥の部屋には檻を設置した。
■カミーユがなんと家に来た、マーガレットと話があるの、、
あの探偵は何?なんとか追い返すピーター
■息子ネルソンはチンパンジーに興味津々、朝ごはんを3人で食べる
■お手伝いのマリアに湿疹が
■エレーヌはマーガレットにうちに来ると言ってあなたどこに行っているの?
新しい恋人?アルシバルド?
■友人たちを招いてマーガレットの誕生会、少し遅れてアルシバルドがきた、誕生日忘れないよ
マックスの鳴き声で客たちは不思議がっていたので食卓に連れてきた。
仲良くマーガレットといちゃつくマックスを見てエレーヌはオスだわと呟く
微妙な空気が流れマックスは檻に戻す
■動物園デートするピーターとカミーユ、サル園、大型犬が愛人の友達サルとセックスできる?
■マリアは診断の結果サルの毛アレルギーだった、、
■アルシバルドが精神科の医者をマーガレットのために連れてきたが、マーガレットは受け付けない
■マックスが逃げた、マリアの湿疹が治った。心配するマーガレット
マリアに湿疹がでてきて、マックスが戻ったことがわかった
マリアは再び出て行く
■女王の来訪対応の打ち合わせ中ピーターはサルの落書き、カミーユの家で
動物学者のロジェに会う。
愛は同じ種の間だけですか?
カミーユにサルの真似をして見せるピーター
■ピーターはマーガレットに僕とマックスどっちを選ぶ?どっちもよ
あなたがその気なら殺せるわ
■娼婦のフランソワズを、家に呼ぶピーター。マックスと性行為をしてもらおうと考えた、金は倍払う。
しかしマックスはフランソワズから逃げるばかり、彼のタイプじゃないみたい
そこに息子が帰ってきた
■ピーターはその夜マーガレットとセックスをし、彼と比べてどうか?と聞くとマーガレットはその話はやめてといい返事を拒否。奥の部屋に行くわ
鍵穴から見えるわ、お望みなら
■ピーターはサルを叩き出すと宣言、それなら私も家を出るわ
動物学者のロジェはあなたの悩みはわかります。施設に連れて行き観察する。
出ていけ!!と激昂するピーター
マーガレット、ネルソン、マックスは檻の中で食事をしている。ピーターは疎外感
頭に血が上ったピーター、銃でマックスを撃ち殺そうとする。しかしマックスが銃を奪い何発か発砲。警察が来てピーターは逮捕されたが外交官ゆえにすぐ釈放された。
■マーガレットの母が転んで入院。彼女は病院へ付き添うこととなりピーターがマックスの世話をする、
マックスは全く食事をしなくなった
■女王がオペラを観劇する為ピーターは外交官として同席していたが、病気のマックスが気になりオペラを中座して、マーガレットの母の入院している病院までマックスを連れ息子と車で向かう。
マーガレットの母はマックスを森で放すとマックスは森に帰っていった。
野生を知らないマックスを案じて泣き崩れるマーガレット。
ママは知ってるの?彼との真実、、だから逃したの?ピーターは真実なんて誰も知らないと答える

<💢以下ネタバレあり💢>
■マックスは見つからずピーター、マーガレット、ネルソンは車で帰宅する。
いつの間にかマックスは屋根の上に乗っていた。パリに着くと道ゆく人々はマックスに喝采。あの娼婦も私よ覚えてる?とにこやかに
家に着くとアレルギーで出て行ったマリアがいた、アレルギーは??マックスじゃなかったです
ご主人の不機嫌アレルギーでした、ほらマックスに触っても大丈夫
マックスを囲んでみんなで食事をする。
マーガレットは、妄想していた。近所からのクレームで警察がマックスを捕まえにくる、私はマックスを殺すの
ーーーあらすじ終わりーーー


🎥🎥🎥
モーリスビンダーのオープニング、名カメラマンのラウール・クタール
脚本はミロス・フォアマンの『パパ/ずれてるゥ!』、フォルカー・シュレンドルフ「ブリキの太鼓」などのジャン=クロード・カリエール
ミシェル・ポルタルのジャズ。
大島渚が単身フランス🇫🇷に乗り込み、海外スタッフと通訳なしで撮りあげた本作、これまでの大島作品とはいい意味で印象は異なっている。

この映画ははっきり言えば獣姦がテーマである。
元々セルジュ・シルベルマンの企画があり大島が撮ることになったみたいだけど、詳しい経緯は知らない。このテーマだとパゾリーニとかブニュエルの一部作品のように上映禁止みたいなリスクもあったのではないか。
ただこの異常なテーマ設定にも関わらず全体のトーンはコメディタッチでちょっとシャレが効いており、上品で最後は祝祭的な感動もあるというとても良い作品だと思う。

獣姦については一般的にアブノーマルなイメージしかないし誰もが顔をしかめるテーマだが、
よく考えてみると人魚姫🧜‍♀️やケンタウロスなどを創造してきた人類はヒトと異なる動物との交配を物語として受容してきたとも言える。
また分子生物学的にもヒトとネアンデルタール人との交配が塩基配列から現在では明らかになっており、
ヒトは異なる進化系統群との交配を行ってきた事実もある。

本作ではピーターは結局”鍵穴”を覗くことはせず、マーガレットとマックスの愛の営みは謎のままだ。
しかし物語としてはヒトは異なる種と愛し合うことができるかという意味で、本作は神話的な射程を持っている。
一方で映画のトーンはコメディタッチでちょっとシャレが効いていてポンポンと話が進むのでリズムが良く
て観やすい。
冒頭の妻の浮気疑惑から現場に踏み込むまで10分くらいで一気に進み、大島渚ってこんなにテンポ良かったっけ
?と思う。
マーガレット役のシャーロット・ランプリングが最高だ、”浮気”現場を押さえられてもあの青く澄んだ瞳はピクリとも動じない。あの揺るぎなさは清々しいものがある。
対象的にピーターの狼狽ぶりは滑稽に映る。それでもなんとかマックスを受け入れ最後は外交官としての重要な仕事を放り出してマックスの世話をする。
ネルソンも子供らしくすぐマックスと仲良くなるのも良い。
マックスは最初の登場は歯を剥き出し怖い感じだがだんだん可愛く見えてくるのが不思議である。

夜のパリをマックスを乗せて走る車、拍手喝采の人々の祝祭的な雰囲気は感動的。大島渚の映画はそこそこ観てきたけどこんなにジーンときたのは初めてかも
でもラストはマーガレットが妄想の中でマックスを殺すという会話で終わる不穏なものでありこの突き落とし方も凄い

国内外の評価はどうなんでしょうか、蓮實重彦が褒めていた記憶はあるがあまり一般的には評価されてないのだろうか。
僕は結構好きですね〜
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