真鍋新一

ジーンズブルース 明日なき無頼派の真鍋新一のレビュー・感想・評価

4.1
殺伐と人が死に続ける70年代東映バイオレンス。この映画ではその惨たらしさがある一定のレベルを超えてしまい、もはや美学や哲学の域に達してしまっているように思う。

人が死ぬシチュエーションの理不尽さは本作が抜きん出ていて、なにもそんなに殺さなくたっていいじゃないかと言いたくなるほどだが、だからと言って命が粗末に描かれているというわけでもないのが不思議である。すぐ出てきてすぐ殺される人にも人生があり、死ぬことの重みがある。

はぁ〜、それさえなきゃ少しはマシだったのに…という、東映映画を観ていると数限りなくあるバカ・ドジ・マヌケなミス。なぜか本作の渡瀬恒彦に対してバカすぎてウンザリ!ではなく、仕方のない不器用なヤツだと憎めない気持ちになるのは、隣でクールな梶芽衣子が見守ってくれているからだろうと思う。あの頼もしさ、どういう結果になろうと良しと思えてしまう安心感。彼女の微笑みですべてが救われる。これも不思議な魔力だ。

それにしてもあれだけ目立った役なのに福本清三がノンクレジットとは…。そして曽根晴美がかぶっているラコステのキャップのダサさ。ラコステってそんなダサいブランドではなかったはずだが…。

音楽はブルコメを卒業して間もない井上忠夫。普段の東映よりも洗練されたロックが主体で、ラウンジ系もお手のもの。いつも不安定な渡瀬恒彦と梶芽衣子が心をひとつにした瞬間だけ流れるあの音楽が良い。サックスはおそらく本人が吹いていると思う。
真鍋新一

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