すずき

母なる証明のすずきのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.3
母子家庭で育ったトジュンは、少し頭の弱い青年。
母親はそんなトジュンを溺愛するが、ある日トジュンが殺人容疑で逮捕される。
強引な捜査と取調べに、罪を認めたトジュン。
母は彼の潔白を証明する為、自ら真犯人を捜査する…

見たいとずっと思ったけど先送りしてた作品。
「パラサイト」の予習にと、ようやく鑑賞。
「グエムル」「殺人の追憶」の時から、「ポン・ジュノ監督は上手い」ってレビューに書いたけど、傑作が3度続けばその才能は本物だと確信。
もっと早くに見ておくべき映画だった!
そしたら、「パラサイト」で話題になって初めてポン・ジュノ監督を知った新規ファンにマウント取れたのに!(笑

んで、「グエムル」「殺人の追憶」のレビューで書いた事を三度繰り返すけど…
やっぱり「ポン・ジュノ監督は上手い」!
必要な時に、必要な演出が出来る、という才能。
映画監督として作品製作に重要なその能力は、タイプはまったく違うけど、スピルバーグ監督に匹敵すると個人的に思う。

内容は韓国映画らしい、イヤなミステリー。
だけどエログロはそこまでキツくはないかな。ファミリーでは絶対見られない内容だけど。
韓国の田舎の寒々とした風景は、そんなイヤな話がよく似合う。

しかしキャラクターはなんか抜けてて、コメディのような人達が多かった。
刑務所に入れられる羽目になったトジュン君は、劇中で触れられないけど「ボーダー」って言われる人なのかな。知的障害者じゃない、ギリギリ健常者の人。
劇中に登場する、知的障害者っぽい子と比べると、瞳にまだ知性が見られる。
ルックスもイケメンで可愛く、演じてる役者のウォンビンは韓流四天王の1人でオバサマ人気が凄い…らしい。よう知らんけど。

で、そんな1人息子を持つ母親は、よくある事だけど、愛情が過剰で、過保護になりがち。
だから必死になって息子の潔白を証明しようとするし、息子の為なら一線も越えてしまう。
別に自分に障害を持つ娘息子がいる訳じゃないのに、彼女の心情が痛いほど読み取れる、優れた設定と脚本だった。
あともう1人ボーダーっぽい女の子出てくるけど、こちらもやたら可愛い。ポロリもあるよ!

それから凄かったのは、オープニング&ラスト!
どちらも主人公のババアがダンスしてる、という画面なんだけど、どちらも笑ってるのか泣いているのか、どちらにもとれる異様な雰囲気。
特に、逆光でシルエットしか見えない&ズームでブレブレという演出の中で、踊り続けるラストには震えた。