ryosuke

遊星からの物体Xのryosukeのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
3.9
エンニオ・モリコーネの低音と高音の振れ幅が大きい不穏な劇伴が効果的。モリコーネはあまりホラーのイメージが無かったけど、どんなジャンルでも出来るんだなあと感心。
画面にほぼ女性が映らない男臭い作品だが、撮影クルーもほぼ男だったとか何とか。
正直一つ一つの描写はイマイチスマートさに欠け、全体的にテンポがよろしく無いので、「名作」というよりはカルトな魅力のある怪作という印象を受けた。
そんな本作が今なお語り継がれるのは、やはりクリーチャーのビジュアル、見せ方の圧倒的な魅力のおかげだろう。リメイク元である「遊星よりの物体X」の(何故かフランケンシュタインのような)クリーチャー(これはこれで味はあるんだけど)から飛躍的な進化を遂げている。「ロボコップ」のロブ・ボッティンによる造形は、CGで何でも表現できる今見ても新鮮な魅力に満ちている。画面手前の布がピクッと動く演出はシンプルながらニヤリとさせられる。突如腹がハエトリソウのようにガバッと開いて腕を食い千切る瞬間や、頭から人間を飲み込んで行く凶悪なビジュアルの自由な想像力に痺れる。上品な「見せない」演出など無縁で、終始モロ見えのクリーチャーの造形一本で真正面から戦えるだけの充分な魅力がある。
「物体」となった犬の目は暗く一点を見つめているように見えるのだが、焼き殺される直前のベニングスも同じ目をしているように見える。ただ、物体ではないクラークについても、ブレアに疑われるシーンに同様の目をしているように見えたのはミスリードなのか、それとも目が云々は自分の考え過ぎだろうか(とか思っていたがwikiを読んだら目にハイライトを入れるか否かで工夫をしたと書いてあって、概ね間違っていないようだ)。
個人的にはラストがイマイチ締まらなかったのはちょっと勿体無く感じた。本来余韻が残る多義的なラストは好きなんだけど、本作に関しては上品さを捨てて徹底的に全てを見せながら進んできたのだから、最後も誰か物体になった人物がブレアの作っていたUFOに乗り込んでニヤリとする、ぐらいの品が無いことをしてくれても作品のテイスト的には問題無かったんじゃないかな。
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