スクリーンの前でただ男女の時間が過ぎていく。そこにはほんとうに、ただの時間しかない。それは映画ではない、という人もいるだろうなとは思うが。
17歳の恋も、34歳の現実も、どちらも淡く鈍い曇り空のようで、その世界との距離感は、現代のリアルなのかも知れない。
好きなシーンのひとつは、34歳のキス。夜明けまで静かに話した二人が、とても静かにキスをする。衣擦れの音、二人の呼吸。そうだ、好きな人とのキスって、こんなに大切なものなんだ。こちらまで息を潜めるような緊張感のなか、思うのはそんなこと。
もうひとつはエンドロールで、柔らかい光のほうへ二人が歩いていくところ。ほとんどこれのために、時々見返している一本。
