あまりに美しい恋物語であると同時に、ふたりの女性がそれぞれ強さを手にしていく映画でもある。恋に落ちるときの、いちばん美しい時間を美しく描くからこそ、それを手放す覚悟をしてでも手に入れたかったものが、より輝きを増すのだと思う。
強さへの憧れから始まった恋心だったけれど、テレーズはキャロルの決意に触れて気が付いたのだと思う。キャロルも自分と同じように弱さを抱え、強い自分でありたいと思う女性だったことに。愛するものを手に入れることで、自分が自分らしく居られなくなるという苦しさは、きっと、多分、女性のほうが共感できるよね。
ひたすらキャロルを追い続けていたテレーズが、ついに強さを手に入れてキャロルと新しい関係を築くことが出来るのは、「憧れ」でしかなかった恋が、「共鳴」を経て愛に変わっていたからなのでは、と思う。ラストシーンのふたりの強い女性の姿に、溢れるほどの希望をきっと見出だせるはず。
