クシーくん

青島要塞爆撃命令のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

青島要塞爆撃命令(1963年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

実はこれ隠れた傑作なのでは?
「さらばラバウル」で戦争の陰鬱な気分をたっぷり味わった後に、同じく池部良が出てくる戦争物だが、今度は主演の1人が若大将加山雄三、という時点でなんだか急にBGMが軍歌からウクレレに転じてしまいそうな能天気ムードを感じて思わず観てみた。
先ず第一次世界大戦の青島の戦いを描いているというのが珍しいし、しかも日本の戦争映画なのにやたらと明るく、冒険活劇のようになっている非常に特異な作品(やっぱ勝ち戦だからかなあ…)。
この時代にライト兄弟の飛行機に毛の生えた航空機で空襲なんてそんな荒唐無稽な、と思っていたらどうも史実らしく、しかも世界初の海上空襲作戦で、実際に航空機から爆弾投下などしていたらしい。あんなピアノ線張ったみたいな代物で本当に攻撃してたのかよ…。無論かなり誇張が含まれているんだろうけど、第一次大戦って文字通りの総力戦だったんだなあ。

冒頭、二機ある飛行機の片割れが不時着して、牛方の左卜全が引くリアカーに牽引されてる時点でゆるゆる感満点。最初だけでこれから段々シリアスになっていくのかと思いきや、特にそんな事もなく適度にゆるいまま最後まで終わる。すげえ。

キャスティング的には恐らくポスターもキャスト順も一番センターになっている加山雄三が主役、という所なのだろうが、加山雄三は既に東宝の看板スター路線を歩み始めていた為なのか、意外にもそこまでふざけず無難な二枚目に収まっているが、その分夏木陽介と佐藤允がコメディリリーフを存分に演じきっている。後半のスパイアクションも含めて事実上影の主役はこの二人といっても差し支えない。浜美枝の美貌にドキドキして目を背けるコワモテの佐藤允が可愛い。
しかし浜美枝のインチキ中国娘といい、浜美枝の住む村の変な中国祭りといい、相変わらずこの時代の外国、特にアジア描写はめちゃくちゃである。

水上機の実物大は実際の物を借りて復元図面を起こして、その筋の専門家達に組み立てて貰ったらしい。軍艦若宮丸は、貨物船を借りて軍艦らしく見せて、それを先程の実物大水上機と一緒に映しているようで、その絵面に感動した。かかった費用がどうこうよりも、その2つを組み合わせるまでの苦労を思うと感嘆しかない。

戦後作品とは思えない能天気な戦争賛美や、ナチュラルな中国人への蔑視的描写など、今日の観点では見過ごせない部分があるのも事実だが、まあこれ以外の戦争映画なんて大半が暗くて悲惨な映画しかないので、たまにはこういう悲愴さがまるでない、図抜け大一番があっても良いんじゃないかな?と思う次第。
最後の連鎖爆発は不謹慎ながらカタルシス満載のピタゴラスイッチで笑ってしまった。本作は円谷英二の特撮芸術が方々で爆発しまくっているが、ラスト特に素晴らしいので、未見の人は是非観てほしい。
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