殺人容疑を掛けられた代貸と接触した座頭市が、彼の無実を証明することができる重要人物を捜すべく、大洗(茨城県)へと向かう。勝新太郎が盲目の侠客を演じている、人気時代劇シリーズの第11作目。
「酷いことに巻き込まれるのは、もうゴメンだ」と吐露しながら、他人の頼まれごとを無碍に扱おうとした市が、めぐりめぐって逆戻り。仁義を重んじる性質により、お礼参りに遭ってしまう。そんな、座頭市の"非日常的な日常"が、鮮やかに落とし込まれている。
本作では、松竹新喜劇の藤山寛美が、市に絡んでくる渡世人(ニセ座頭市)を好演。錫杖の仕込み刀を無闇に誇示しながら、不慣れなめくら芝居を打ってくる。昭和の喜劇役者が売りにしていた、固有の"芸"を堪能することができる。
一応のところ、市に助けられる婦人の役柄で滝瑛子が登場するが、取って付けたようなヒロイン枠という印象が強い。用心棒とのリスペクト・マッチも用意されておらず、飽和状態からの脱却に苦労しているようなイメージが湧き上がる。