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A.I.のtjZeroのレビュー・感想・評価

A.I.(2001年製作の映画)
3.3
スタンリー・キューブリック生前の企画を、スティーヴン・スピルバーグが映画化。

全体は大きく3つのパートに分けられる。

① 主人公の人造児童デイビッドが人間家庭に迎え入れられるが、誤解の積み重ねから捨てられてしまうまで。
ここの家庭ドラマが一番スピルバーグっぽくて面白い。
難病で入院中の長男の代わりに両親から愛されていたデイビッドだったが、その長男が退院してきたことで徐々に居場所を失っていく。光とか水とか小物とかを巧く使ってサスペンスを高め、主人公を追い詰めていくスピの演出が冴えている。

② 孤児となったデイビッドが、性奉仕ロボのジョーと知り合うが、共にロボットを処刑する娯楽施設に送られてしまうまで。
ここはキューブリックが撮っていたらもっと面白かっただろうなあ、というパート。
ジョーの本拠地である歓楽街の性描写、処刑場での暴力表現…を『時計じかけのオレンジ』ばりのセックス&ヴァイオレンス演出で観てみたかった。

③ ジョーの助けを借りて脱出したデイビッドが、自らの出生の謎を探りに水没したマンハッタンを訪ね、そして2000年後の未来につながるラストまで。
ここもやはり、キューブリック・タッチが恋しくなる部分だった。
デイビッドの「人間になりたい」という本能的な命題に、「そうすればもっとママに愛されるから」というスピルバーグ・テイストの後付けの理由を足してしまったため、話が小さくなってしまっている。
「人間になりたい」っていうシンプルなテーマで押し通していれば、「人類の起源とは?」とか「人間と人工知能の違いとは?」といった広がりのある問いかけが浮かび上がり、『2001年宇宙の旅』ばりの深遠なエンディングになったかもしれない。
スピ風のマザコン・テイストが加わったために、「結局、あのママに会いたかっただけか…」と観客にとってどこか他人事というか、普遍的な広がりを感じられない収まりになってしまった。

個性の強い両巨匠を混ぜ合わせたら、どっちつかずの味わいになってしまったような作品。
両監督作が好きなかたなら、一見の価値はあると思う。
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