櫻

真夜中の虹の櫻のレビュー・感想・評価

真夜中の虹(1988年製作の映画)
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自分で決められることはあまりに少なく、理不尽は誰かをわたしたちとして絡め取りながら数多の可能性を奪う。もうなにもないよと言っても、つめたい顔でやってきては、こころのろうそくを一本ずつ吹き消して去っていく。現在の世界はそんなふうになっているように思う。「そして ぼくらが旅したあの街に 争う街に 悲しみに暮れた街に 同じ 朝がくるよ クリスマスの朝が」とやさしく語りかけるような歌を聴いていた。いつも何かとちがうことに安心したり恐れたりするけれど、この曲の「同じ」には安らぎがつまっている。これはひとつの祈りである。帰る家と安心して眠る場所があって、ごはんの心配をすることがない日々を過ごすことが誰もにあることを願うのは、現在起こっている殺戮や不幸にするすべてのことへのささやかな夢のような抵抗だった。いつか途方にくれてしまったあなたが、この作品の彼らのように出会って生きていけますように。この世界が変わらなくても、あなたとあなたの大切な人にしか見えない虹をしずかに目指せるといい。
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