櫻

遠い声、静かな暮しの櫻のレビュー・感想・評価

遠い声、静かな暮し(1988年製作の映画)
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それでも楽しい時間を過ごしてきたのだと、この家族を光が囲んでまたたいていた。歌っている顔とこころのうちは違う。うつくしい記憶は、必ずしもあたたかなやわらかいものだけではなく、目を逸らすことのできない暴力と1秒先も生きていくための諦念も含んでいた。家父長制を体現するような父にも静かなやさしいこころはあるのに、突発的に激情として出てくる哀しさ。女たちのからっとした会話の気持ちよさ。家族だとしても、ひとときも同じでいられず変わっていくから、こんなふうに写してとっておいたのかもしれない。
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