タスマニア

ライフ・オブ・デビッド・ゲイルのタスマニアのレビュー・感想・評価

4.0
2022年85本目。

明確に答えがない問(死刑制度の是非)を投げかける手段としてのこの作品。
劇中でも「感情的にならないように」というセリフがあり、確かに冷静に受け止めるべき議論だと頭では分かってはいる。
それだとしても、この映画は展開の伝え方があまりにもドラマチックすぎて心が揺らいでしまうではないか。

これまでケヴィン・スペイシーが演じてきた役の性質上、どうしてもこの映画もサスペンス的な要素やサイコ的な要素を想像してしまう部分がある。
「彼がどのタイミングで不敵な笑みを浮かべるのか?」というアイディアが頭をよぎり、個人的には、それが良い作用を生んでいた。
正直、展開や結末は予想できる部分はあったけど、それでも "最後までどう転ぶのかわからない感" を匂わせてくれるのが、ケヴィン・スペイシーがゲイルを演じている価値な気がする。

もっと言うと、この映画は "結末や重大なネタバレを知ること" にカタルシスを感じる性質な映画ではない気もする。
その結末に至るまでのプロセス、つまり、「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」を追体験することに意味がある。
彼の人生を通して、結論づけた彼なりの死刑制度に対する回答を受け止める体験なんだと感じた。そう納得するようにした。

ゲイルの最愛は彼の子供であると同時に、やっぱりコンスタンスだったんだろうか?
恋仲というわけではなかったけど、妻とは比較にならないほどの愛情を感じたし、"同志" のような強い絆を感じて、彼女とのシーンが優しくも辛くもあった。
彼女の病気を知り、彼女の人生のミッションに寄り添うことを選んだゲイルは殉教者か、愛だったのか。

想像したような笑みはなかったけど、最後は彼の思い通りに全てが運んだシーケンスを見ながら、「やっぱり、ケヴィン・スペイシーだなぁ」って思うのだった。
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