タスマニア

ある男のタスマニアのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.0
2022年106本目。

安藤サクラは「万引き家族」で喜怒哀楽の「怒」と「哀」の表現の史上最高得点を叩き出してた。って個人的には思ってる。
そんな安藤サクラは、この映画でも「哀」の表現が突き抜けてた。
冒頭の泣き方えげつない。結構心持っていかれた。

もちろん、内容も良かったんだけど、振り返ってみると、この映画に関しては「映画に出てたら個人的に刺さる演技をしてくれる、個性的で演技ウマウマパーソン」が大量に出演していたように思えた。
名前あげ始めるとキリがないんだけど、なんか "The 映画" って感じがするキャストだった。安藤サクラなんてまさにそう。

「こんな人生は望んでいなかった」という不条理に対して、ワインのラベルを張り替えるように、新しい人生を上塗りするロンダリング。
遠い話のように思えるけど、「人生のソフトリセット」としては全然選択肢としてあるなって思ってしまった。
特にこの作品では登場人物のほとんどが大なり小なり「こんなはずじゃなかった」を抱えていた。
それの象徴がラストシーン。
あの先にどのぐらいの地獄が続くのか?を想像できる。

そういった意味でも、里枝が大祐を抱きしめて「大丈夫、大丈夫」というシーンが個人的に強烈に印象的。
「人それぞれが何かを抱えている」を理解しているがゆえにできる優しさ。
辛い経験や悲しい思いをしたからこそ、他者に優しくなれるんですね。
またまた、ここでも安藤サクラの演技無双だわ笑

一方で、「捨ててしまいたい」と本人が思う人生だけど、その人生を愛おしいと大切に思っている他者がちゃんといる側面もある。
里枝もそうだし、美涼もそう。
てか、仲野太賀が劇中に一言も言葉を発しないのすごすぎる。
演技ウマウマパーソンの一人が、 "そこに存在するだけ" でドラマを作っていた。

あと、柄本明恐ろしすぎる笑
最高のクソジジイを演じてくれた。
差別に対する詭弁のような本質のようなモヤモヤを残したまま、退場していく。。。
柄本明といい、安藤サクラといい、なんなんあの一族笑

あとは本当に個人的なんだけど、やっぱり可愛い可愛い河合優実。
語呂がいい。
少ない時間でも本当に目が離せないんだよなぁ。
自分としては嬉しいけど、茜って実際登場人物として機能してた?笑

里枝と悠人が最後に到達する結論は割とありふれたものなんだろうけど、「過去どんな人だったか?」より「今どんな人であるか?」を大切にする考えが、大祐を救っていたんだなって思う。
悠人いい子やで。できた息子やで。
タスマニア

タスマニア