えびちゃん

大地のうたのえびちゃんのレビュー・感想・評価

大地のうた(1955年製作の映画)
4.8
信じがたい作品だった。監督のサタジット・レイはどんな生涯を送ってきたんだろうと思う。貧困に寄り添い心を配らせつつ、詩情が溢れたような自然や人の営みへの描写に驚く。なんて豊かな映画なんだ。映るものがいかに貧相であったとしても美しい情景を前にするとこんなに豊かに見えるのか。
初めて観るタイプのインド映画だった。急に歌い出す人はいないし、だれも踊らない。ラヴィ・シャンカルのシタールやインド楽器のスコアが優しくて時に厳しくて、心が波立つ。
必ずしも正義は弱者の味方ではないと嫌になる。正しいか否かで物事を判断するのは大切なものを見落としてしまう事もある。背景まで見渡せられるような人間になりたいものですが、、、。
雷鳴が響く雨の中、踊るように雨を浴びるおねえちゃん。こちらが雷に打たれたような衝撃の一幕。美しさと恐怖が混じり合う瞬間は忘れ難い。こういう瞬間に出会うことができるのは幸せだな。この作品に出会えて良かった。
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