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砂の器のYOU5521のレビュー・感想・評価

砂の器(1974年製作の映画)
3.8
昔から安部公房の『砂の女』と混同しがちだった。
フルオーケストラ・シネマコンサート
なるものがある。時々新聞広告で見かける。
『タイタニック』や『男と女』など
誰もが認める名作が並ぶ。
ある時そこに『砂の器』があった。
それほど?っていっきに興味が湧いた。
原作は安部公房ではなく松本清張。
松本清張の映画は横溝正史のように
古いしきたり、慣習、戦争体験、昭和的風俗が
ベースにあり確かに見応えがある。
『天城越え』はその際たるものだろう。
広末涼子主演『ゼロの焦点』(2009年)は
だいぶ洗練されていた。
本作を観ていて頭に浮かんだのが
森村誠一『人間の証明』と『ゴルゴ13』の
戦争時代の逸話。
昭和の匂いがぷんぷんするのだ。
『陽のあたる場所』や『めまい』のオマージュも感じた。
東京、秋田・亀田、島根・亀嵩、伊勢、石川と、
原武史「歴史のダイヤグラム」のような紀行気分になる。
社会福祉が貧弱で、乞食・物乞い・放浪が疎まれた時代。
癩病の父と子。父親役の加藤嘉が迫真だった。
確かに終盤の回想と音楽の絡みが見事だ。
芥川也寸志が音楽監督だったのだな。
なぜ恩人を殺めることになったのか?
この辺の機微は複雑で深い。
「首に縄をつけてでも…」今では耳にしないセリフだ。
自分の信念や思いが他者のそれと同じだと思えた、
共同幻想の時代。戦争や家父長の名残りでもある。
昔は思いが激しかったのだとわかる。
丹波哲郎がなにげに好印象、森田健作も若々しい。
小津映画でおなじみの佐分利信が渋い。
なによりも存在感があったのは島田陽子。
汚れなき女性像を地で行っている。
本作ではさらに裸の胸が見れる。
実生活では、少女時代にバレエをやっていたらしい。
さもありなん、そんな感じだ。
内田裕也と不倫、ヘアヌード写真集、略奪婚、
AV出演とファンを驚かせた。
お仕着せへの反発、自分らしさの希求、
殻を破りたい衝動などあったろうか。
今書いていて、先日島田陽子の訃報が新聞に
あったことを思い出す。
いろんなことをしみじみと思う。
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