YOU5521

猿楽町で会いましょうのYOU5521のレビュー・感想・評価

猿楽町で会いましょう(2019年製作の映画)
4.2
福沢諭吉の「学問ノススメ」。
「~ノススメ」はいまでもよく使われる。
「ソロ活女子のススメ」「ラフな生活のススメ」。
いろんな思いと意味、方向性、イメージを内包する
超一級のタイトル常套句だろう。
「~へようこそ」もそうだ。
豊川悦司・加藤あい出演のドラマ「同窓会へようこそ」。
1999年放映された。その日がお盆だったことも
あって印象深い。
『N・H・Kによろしく!』『ブラックジャックによろしく』
もある。
そして本作の「~で会いましょう」。
1960年代の「夢であいましょう」に
「日向坂で会いましょう」。
いずれも含みの多い、不朽のタイトル用語だ。
そんな本作の題名と手触り感のあるジャケット。
素通りはできなかった。一期一会。
観る前の段階でそういう直感がある作品は
大事にしないといけない。
本作を知ったのは漫画『明日、私は誰かのカノジョ』
の14巻目。
顔と心に傷を持つヒロインが少し心を開いた男性。
「あんな女嫌だわ」「でもリアルだよね」
「これカップルで観たら死ぬ映画だって!」
「余韻がやばい」
映画の後、二人で猿楽町を訪れる。
同じ街並みを二人が歩く。
猿楽町という場所は知らなかった。
渋谷と恵比寿の中間。
今まで注目したことはない。
そんな身近な、でも知らなかった場所。
言葉選びとこの地名を使ったことに
センスを感じる。
前半、ヒロインのコケティッシュな初々しさが
微笑ましい。
「浴衣着る 少女の乳房 高からず」
裸はないなと思ったが、そんなことはなかった。
『メメント』のような墜落感。
『ダンシング・イン・ザ・ダーク』ばり憂鬱。
ジョージ・A・ロメロ、白い肉がおいしい、
好きだったこと会いたかったこと人は忘れる、
聞き覚えを誰かに話す軽さ。
エステの客と編集者、突然の訪問、布石と回収。
嘘、寝取られ。
マニア好みの演出とこれでもかの苦味。
倉本聰は『北の国から』であえてダメ人間を描いた。
「どうしてこんな」と思ったが
それを描きたかったという。
「(自分は)どんな人?そんなの知りたくないです」
ユカが苦い表情で答える。
「『人間には失敗する権利がある』。
この『失敗する権利』のことを『自由』という」
(高橋源一郎『だいたい夫が先に死ぬ』)
「クズ」(人間の醜さ)を描く意味を考える。
YOU5521

YOU5521