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THE FIRST SLAM DUNKのYOU5521のレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
5.0
知人は映画館で13回観たという。
「今日は山王が勝つかも」
そう笑った。
その知人が購入したDVDを借りて観た。
いつもはメモしながら停止、戻しを繰り返し
同じ箇所を納得がいくまで見直す。
いつものやり方で観ようとしたら
すがるように、ぜひ一度目は通しで観て、と
懇願された。
その疾走感を伝えたかったのだと思う。
(ごめん、いつものやり方で観てしまった)
DVDよりも映画館の方がやっぱり良いとも言っていた。
映画館で観てないので比較できないが
DVDでも十分面白かった。

「スポーツ選手の清々しい顔」
ってあると思う。
リョータの表情が一変するシーンがある。
沖縄の横穴で大泣きした後、海に沈む夕日を
港の埠頭から見る。
その時のリョータの表情は透徹している。
試合中のリョータの表情が眩しい時は何度もあった。
三井にもあった。
清々しい顔を描ける作家は稀有だ。
そう言えば湘北も山王も試合中、怒りはなかった。
一流とはそういう境地なのだろう。

「ああ、あの時の…」
リョータと三井の初めての出会い。
点と線がつながった時の感動ったらない。
不良からバスケ、そして全国大会へ。
『あしたのジョー』のような展開が
ぐっと胸に来る。

先日上梓された鈴木おさむ『仕事の辞め方』に
「出世は寂しい」(p47)という項目がある。
「仕事の結果だけで出世する人と、
出世を目指して出世する人とでは
大きく違います」
「仕事の結果だけで出世している人って、
上の人からしたら『怖い存在』だと思うんですよね。
自分に媚びることなく結果だけで将来を生む」
『怖い存在』、あのリョータや三井の
清々しい表情はこれなんだと思う。
損得なしとか、覚悟とか、捨てきったとか、
計算のないとか、つきものが落ちたとか、
純粋とか、そういったもの。
「あしたのジョーもそう」、
ミッシェル・ガン・エレファンㇳもそう、
検校にとって無だった浮浪雲もそう。
①この表情を描いている点
②点差を付けられた湘北の絶望感
③「英雄、英雄を知る」(鈴木おさむの言うところの)
 出世を目指さない山王の魅力
④会場が湘北コールに包まれるシーンでは
 誰もが胸にくるものがあるだろう
⑤「憧れの山王へ進学する」じゃなくて
 「憧れの山王に勝つ」を目標にする
 というパンク(反骨)
これらを描いている点で、本作は傑作だ思う。
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