YOU5521

花束みたいな恋をしたのYOU5521のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.2
奈倉有里と逢坂冬馬の文学姉弟、
その二人の対談が収められた『文学きょーだい‼』。
最近読んだ本ではピカ一だった。
その中で『さかなのこ』と並んで
紹介されていた映画。
気になったので観てみた。
脚本は坂元裕二、昨年『怪物』でカンヌ脚本賞。
落合陽一の本で坂元に関心はあった。
『大豆田とわ子と三人の元夫』など
新しい家族のあり方、人間関係に注目だ。
本作冒頭カフェでスマホの曲を聴くカップル。
ご託宣たれる菅田君と架純ちゃん。
ここで一気に引き込まれる。うまい。
(このシーンはフラグになっている)
明大前で最終電車に乗り遅れた見ず知らずの4人。
「結構マニアックと言われるけどね」の後の
『ショーシャンク』、
『魔女の宅急便』で、えっ実写のほう、と驚く菅田君。
「あなたたちか、この世に数々の
実写版を生み出しているのは」
ニヤニヤした架純ちゃんの表情にピントが合う。
観る側も含めて、苦笑いと共に一気に無言の
同志を作る。
作り手が、観客目線を失わず、
素人心を持ち続けていないとこうはいかない。
「好きなものは、バールのようなもの」
「電車に乗っていたら、ということを彼は
電車に揺られていたら、と表現した」
間、セリフもうまい。
昨年の傑作アニメ『スキップとローファー』の
地味キャラ・誠(女性)が、文芸部部長の
文学的な物言いに好感を持つシーン、
それを思い出す。
それにしても押井守を実際登場させるとは、
アッパレ。押井という点で作品の色が決まる。
巧妙だ。
「ほぼうちの本棚じゃん」
何度も出てくるお揃いのような白いスニーカー
やイヤホンなど、小物が効いてる。
気になるのはこの気の合いすぎたカップルの行く末。
「細い雨が外灯のオレンジで切り取られて
降り注いでいた」
「コンセントがギリ届いて、
私の濡れた髪を乾かし始めた。
何かが始まる予感がして心臓が鳴ったけど、
ドライヤーの音が消してくれた」
「ありがとう、押しボタン式信号」
自分らしくあった大学時代を経て、社会人に。
5年間の「関係性」の変化…

「3ヶ月セックスしていない恋人に
結婚の話を持ち出すってどんな感じだろう」
「好きなこと活かせるって、そういうの
人生なめてるって考えちゃう」
「もうどうでもよくなった」
「恋愛って生もんだからさ、賞味期限があるんだよ」
「楽しかったね」

「文学きょーだい‼」は「働くこと」の不条理を
語っていたのだった。
YOU5521

YOU5521